「顧問税理士=記帳と申告」だけの関係になっていませんか?
顧問税理士と“上手に付き合えている会社”と、“なんとなく毎月やり取りしているだけの会社”の差は、意外とシンプルです。
前者は「月次試算表を経営の武器として使っている」。後者は「月次試算表を“提出物”として受け取っているだけ」。
この違いが、数か月後の資金繰り、ひいては銀行からの見られ方まで変えてしまいます。
よくあるのが、こんな状態です。
- 月次試算表は毎月出ているが、見ているのは売上と利益だけ
- 役員報酬や節税の話はするが、資金繰りの話はほぼしない
- 「利益は出ているのに、なぜかお金が増えない」が慢性化している
- 決算が近づいてから納税額を知って、慌てて資金をかき集める
- 仕訳が合っているか間違っているかの確認作業
ここで大事なのは、税理士が悪い・合わないと言いたいわけではない点です。税理士の本業は税務申告であり、税務の世界は「正しく過去を締める」ことに強みがあります。
一方、経営者が本当に困るのは「未来の不安」です。
来月いくら残るのか、半年後に資金がどうなっているのか、借入の返済に無理がないのか。
つまり、税務は過去、財務は未来。
同じ決算書や月次試算表を見ていても、目的と視点が違うんですね。

だからこそ、顧問税理士との関係が“記帳仕訳だけ”で止まってしまうと、経営としてはもったいない。月次試算表は、単なる成績表ではなく、早期警戒レーダーにも、次の一手を決める地図にもなります。
問題は「作っているか」ではなく、「使えているか」。このコラムでは、月次試算表を“未来の意思決定”につなげるために、顧問税理士とどんな付き合い方をすると良いのかを、具体的に整理していきます。
月次試算表の目的は2つ。利益の着地と、向こう半年の資金繰りを“先に”読む
月次試算表を作る目的は、ざっくり言うと2つです。どちらも「未来の意思決定」のためにあります
① 月の損益を把握し、着地利益から納税額を予測すること
当月のPL(損益計算書)を見れば、売上・粗利・経費・利益の現状が分かります。でも本当に大事なのは「今月いくら儲かったか」だけではなく、このまま行くと期末にいくら利益が残り、納税がいくらになるかを早めに掴むこと。
納税は“突然の出費”ではなく、事前に準備できる支出です。ここを後回しにすると、決算直前に資金繰りが一気に苦しくなります。
② 現預金残高を把握し、少なくとも半年先の資金繰り予測を立てること
経営で怖いのは「赤字」より「資金ショート」です。利益が出ていても、現金が減ることは普通に起きます。
売掛金が増えた、在庫を積んだ、設備投資をした、借入返済が進んだ――この“ズレ”はPLだけでは見えません。
だから、BS(貸借対照表)とセットで現預金の動きを確認し、半年先までの資金繰りを先読みしておく必要があります。

ここで効いてくるのが、CF(キャッシュフロー)計算書です。BS・PLに加えて月次でCFがあると、「お金が増えた(減った)のは、どの活動の結果か」を分解して把握できます。
- 営業CF:事業そのものでお金が増えたか(減ったか)
- 投資CF:固定資産の購入・売却などで増えたか(減ったか)
- 財務CF:借入や返済で増えたか(減ったか)
特に重要なのが営業CFです。営業CFのマイナスが連続しているなら、戦略的(先行投資・成長投資)で説明できるのか、それとも意図せぬ“失血”なのかを早く見極める必要があります。
意図せぬ失血なら、PLを分解して原因を掴みます。原価高なのか、在庫増なのか、人件費の管理なのか、そもそも損益分岐点に届いていないのか。
原因が見えれば、打ち手は一気に絞れます。
ただ現実には、月次でここまで踏み込む税理士事務所はまだ多くありません。
理由はシンプルで、税務=過去を正しく締める仕事、財務=未来に備える仕事だからです。
視点が違う。
だからこそ経営者側が「月次資料を何に使うか」を握り、必要なアウトプット(BS・PL・CF、資金繰りの見立て)を求めていくことが、上手な付き合い方になります。
数字が苦手でも大丈夫。月次を「社長の意思決定ツール」に変える頼み方
「BSとかCFとか言われても、正直よく分からない…」
これ、あるあるです。むしろ多くの経営者がそうです。大事なのは、完璧に理解することではなく、“社長が判断するために必要な要点だけ”を毎月同じ形で受け取ること。その型さえ作れれば、数字に強くなくても月次は一気に武器になります。
1)まずは月次を「3枚セット」にしてもらう
顧問税理士に、次の3つを毎月セットで出してもらうよう頼みます。
- PL(損益計算書)=「今月の成績表」
→ 売上、粗利、経費、利益がどうだったか。 - BS(貸借対照表)=「体力テスト」
→ 現金がどれだけあるか、借金はいくらか、売掛金や在庫が増えてないか。 - CF(キャッシュフロー)=「お金の増減の理由」
→ 現金が増えた/減った“原因”を、ざっくり3つに分けて教えてくれる表。
この3枚があると、社長が悩みがちな「利益は出てるのに、なんでお金がないの?」が説明できるようになります。
2)社長が毎月見るのは「4つだけ」でいい
数字が苦手なら、見るポイントを絞りましょう。最低限この4つです。
- 今月の利益はどうだった?(PL)
- 現金は増えた?減った?残高はいくら?(BS)
- 現金が動いた理由はどれ?(CF)
- 事業で増減(営業)
- 設備などで増減(投資)
- 借入・返済で増減(財務)
- 経費の割合は悪くなってない?(前年差・先月差でOK)
ポイントは「正確に読む」より、変化に気づくことです。変化に気づけば、次に質問できます。

3)一番大事なのは「事業のお金(営業CF)」が元気かどうか
CFの中でも社長が一番見るべきは、営業CF=“本業でお金が増えてるか”です。
- 営業CFがプラス:事業がちゃんとお金を生んでいる状態
- 営業CFがマイナス:事業が今、お金を吸っている状態
営業CFのマイナスが1回だけなら、たまたまのこともあります。怖いのは、マイナスが続くこと。続くなら「それは狙ってやってるのか?」をハッキリさせる必要があります。
- 先行投資で一時的にマイナス(広告、人員増、出店など)→ 戦略的ならOK
- 意図してないのにマイナス → 原因を特定して手を打つ必要あり
4)原因は“よくある4パターン”に分けると理解が早い
意図しない営業CFマイナスの原因は、難しく考えずに、まずこの4つに分けて見ます。
- ① 粗利が薄い(原価高・値上げ不足)
→ 利益が出にくく、現金も残りにくい - ② 在庫が増えている(倉庫にお金が寝ている)
→ 仕入で現金が出て、売れるまで戻ってこない - ③ 売掛金が増えている(入金が遅い)
→ 売上はあるのに、現金が入っていない - ④ 固定費が重い(人件費・家賃・外注など)
→ 毎月の出血が止まりにくく、損益分岐点が上がる
これを税理士に「専門用語で説明してください」ではなく、こう頼むのがコツです。
「今月、現金が減った原因はこの4つのどれですか?一番大きいのはどれですか?」
これだけで会話が“経営寄り”に変わります。
5)税理士に頼むときは「質問テンプレ」で渡すとズレない
顧問税理士との月次面談(またはメール)で、毎月この3点を聞く形にすると、関係が整理されます。
- ① 今月の利益と、期末までの着地見込み(納税はいくらになりそう?)
- ② 現金が増減した一番の理由は何?(CFで)
- ③ 営業CFがマイナスなら、原因はどれ?(粗利/在庫/売掛/固定費)
これで、月次が「見て終わり」から「次の一手を決める場」に変わります。
そして現実的に、税理士事務所によっては“財務の深掘り”が得意ではない場合もあります。そこは良い悪いではなく役割の違いです。だからこそ私たちのような財務コンサルは、税理士との顧問関係を壊さずに、資金繰り・CF・銀行対応など“未来側”を補完する位置づけになります。
次回面談から変えられる。顧問税理士との付き合い方「3つの質問」と運用ルール
顧問税理士との関係を“記帳と申告だけ”から一段上げるのに、難しい改革は要りません。次の面談から、聞く内容と資料の出し方を少し変えるだけで、月次は「未来の不安を減らす時間」に変わります。

1)次回の面談で聞くべき「3つの質問」
数字に強くなくても、これだけ押さえれば十分です。
- 「今月の利益はどうでしたか?このままいくと期末の着地利益はどれくらいですか?」
→ 目的:利益の見込みを早めに掴む(手遅れを防ぐ) - 「納税はだいたいいくらになりそうですか?いつまでに、いくら残しておけば安全ですか?」
→ 目的:納税を“突然の出費”にしない(資金準備を前倒し) - 「現金が増えた/減った一番の理由は何ですか?本業(営業CF)はプラスですか?」
→ 目的:「利益と現金のズレ」を説明してもらう(資金繰りの早期警戒)
この3つの質問を毎月ルーティンにすると、会話が自然に「税務(過去)」から「財務(未来)」へ寄っていきます。
2)月次資料を「標準セット化」して迷いをなくす
やり取りがうまくいかない会社ほど、資料がバラバラで、見たい数字が毎月違います。おすすめは、月次の標準セットを決めてしまうこと。
- PL(当月・累計)
- BS
- CF(営業・投資・財務)
- (可能なら)向こう6か月の簡易資金繰り表
そして社長側は、毎月見るポイントを固定します。
- 利益(今月・累計・着地見込み)
- 現金残高(増減の理由も)
- 営業CFが元気か(プラスか、マイナスが続いていないか)
- 経費比率が悪化していないか
「同じ形で、同じ順番で見る」だけで、数字は驚くほど理解しやすくなります。
3)もし営業CFがマイナスなら、原因は“4択”で十分
営業CFが意図せずマイナスなら、難しい分析を求めなくてOKです。まず税理士にこう聞いてください。
「現金が減った原因は、粗利・在庫・売掛・固定費のどれが一番大きいですか?」
- 粗利が薄い(値上げ不足・原価高)
- 在庫が増えた(お金が倉庫に寝ている)
- 売掛金が増えた(入金が遅れている)
- 固定費が重い(人件費・家賃・外注など)
この“4択”に落とすだけで、改善の入口が見えます。入口が見えれば、次の打ち手(値付け、在庫圧縮、回収条件、固定費の見直し)が具体化します。
4)それでも埋まらない部分は「役割分担」で補完する
最後に大切な前提です。税理士事務所によって、資金繰りやCFの深掘りが得意なところ・そうでないところはあります。これは優劣というより、税務=過去を正しく締める、財務=未来に備えるという役割の違いから起きます。
だから結論はこうです。
- 税理士には「正しい月次・申告・納税見込み」をしっかり担ってもらう
- 未来の資金繰り、CF分析、銀行対応まで強化したいなら、外部CFO的な財務支援で補完する
私たちのような財務コンサルは、顧問税理士を置き換える存在ではなく、顧問関係を壊さずに“未来側”を強くする補完ポジションです。
月次は、作るだけでは会社を守りません。使って初めて、資金繰りが守れます。
次回の面談で、まずは「3つの質問」を投げてみてください。
もし「どこから手を付ければいいか分からない」「資金繰り表やCFの見方を整えたい」という場合は、顧問税理士との関係性を前提にした形で、こちらで月次の運用設計から一緒に整えることも可能です。
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