決算が終わっても油断禁物、銀行は“数字の裏側”を見ている
「ようやく決算が終わった。ひと安心だ。」
そんな気持ちになるのも束の間、銀行へ決算書を提出した瞬間にふと不安になる経営者は少なくありません。
「今年もまた評価が下がるかもしれない」「融資枠が縮小されたらどうしよう」。
この“決算後の不安”の正体は、銀行が決算書を「税務上の資料」ではなく、「信用力を測る評価表」として見ていることにあります。
多くの経営者にとって、決算書は「税金を計算するための報告書」という位置づけでしょう。
しかし銀行の目線では、決算書は融資先企業の健全性と将来性を判断するための“最重要資料”です。
つまり、同じ数字でも「税務的な見方」と「金融的な見方」はまったく異なるのです。
たとえば、節税目的で経費を多めに計上した結果、最終利益が小さくなった場合。
経営者としては「税負担を抑えられた」と思っても、銀行側から見れば「利益を出せない企業」と評価されるリスクがあります。
また、貸借対照表(BS)に過大な売掛金や棚卸資産が残っていれば、「回収・在庫管理が甘く、資金化に時間がかかる会社」と判断されることもあります。
銀行の融資判断は、決算書1年分の数字でおおむね決まります。
その1枚の書類が、翌期の融資枠・金利・取引条件を左右する、そう言っても過言ではありません。
だからこそ、「決算が終わったら安心」ではなく、「決算書が完成する前こそ勝負のタイミング」なのです。
特に中小企業の場合、決算書の“見せ方”によって印象が大きく変わります。
数字の整え方ひとつで、銀行担当者の受け止め方が「慎重姿勢」から「前向き評価」に変わることも珍しくありません。
経営者自身が「銀行がどの数字をどう見ているか」を理解しておくことで、融資交渉の主導権を握ることができます。
決算書は単なる“過去の記録”ではなく、“未来の資金調達に直結する経営ツール”。
銀行との関係を良好に保ちたい経営者ほど、決算後ではなく決算前の準備と対策を意識することが重要です。

貸借対照表(BS)が1日で変わる、決算日調整が銀行評価を左右する理由
決算書の中でも、特に銀行が重視するのが「貸借対照表(Balance Sheet)」です。
損益計算書(PL)が“1年間の結果”を示すのに対し、BSは“決算日1日の財務状態”を切り取ったもの。
つまり、たった1日の数字の違いが、銀行評価を大きく左右することになるのです。
たとえば、売掛金が多く残っていると、銀行は「回収が遅れて資金が滞留している」と見ます。
棚卸資産(在庫)が過剰であれば、「売れ残りが多く、在庫リスクが高い」と判断されることもあります。
逆に、現預金が多く残っていれば「資金繰りが安定している」、買掛金や未払金の支払いが翌月以降に回っていれば「資金に余裕がある」と評価されやすくなります。
つまり、決算日の1日の動きが、翌期の融資判断に直接影響するのです。
銀行が融資審査を行う際、主に参照するのは決算書に記載された数字。
決算日以降の改善や一時的な要因は、補足資料や口頭説明で伝えることはできても、格付や金利判断に反映されるケースは多くありません。
したがって、決算日の前後に行うちょっとした工夫が、財務評価を大きく変える可能性があります。
たとえば次のような対策です。
- 売掛金はできる限り決算日前に回収しておく
- 棚卸資産は必要最小限に抑え、在庫を圧縮する
- 買掛金や未払金は、支払いを翌月以降にずらす(無理のない範囲で)
- 決算日前の在庫仕入れを避け、翌月に回す
こうした調整を行うだけで、BS上の「資金の厚み」が変わります。
銀行担当者は、決算書を見た瞬間に「この会社は現金を持っている」「資金繰りが安定している」と感じ取ります。
その印象が、融資条件や追加資金の可否に直結することも珍しくありません。
ここで注意したいのは、「粉飾」と「調整」はまったくの別物だということです。
数字を意図的に改ざんしたり、架空計上を行うのは当然NGですが、適正な範囲で決算日を意識した運用を行うことは、経営管理の基本です。
たとえば、大手企業でも決算月には資金の回収や支払いのタイミングを細かく調整し、見せ方を最適化しています。
中小企業も同じように、「決算日をどう迎えるか」を戦略的に考えることで、銀行からの評価を一段階引き上げることができます。
わずか1日の数字の違いが、1年先の資金調達に影響する、それがBSが持つ“重み”なのです。

月次試算表の役割を正しく理解する“評価を変える”のではなく“信頼を積み上げる”資料
「決算書の内容が悪くても、翌月の試算表で改善を見せれば大丈夫ですよね?」
経営者の方からよくいただく質問です。
結論から言えば、月次試算表は決算書の代わりにはなりません。
銀行の信用格付や融資判断は、あくまで「決算書に基づいて」行われるからです。
つまり、試算表を提出しても、既に確定した評価を根本的に覆すことは難しいのが現実です。
では、月次試算表に意味がないのかといえば、まったく逆です。
月次試算表は、銀行との信頼関係を築くうえで非常に有効な資料です。
たとえば、決算時点では売掛金や棚卸資産が多く、資金繰りが悪化して見える場合でも、翌月以降の試算表で明確に改善が確認できれば、銀行側は「一過性の要因だった」と理解しやすくなります。
これは格付けを変えるものではなくとも、「経営の改善意識が高い企業」という印象を与えることができ、次回の融資交渉にプラスに働くのです。
また、月次試算表を定期的に提出している企業は、銀行担当者からの信頼が厚くなります。
なぜなら、試算表をきちんと整備している企業は、経営管理ができている=リスクが低いと見なされるからです。
実際、銀行内部では「試算表を毎月提出してくれる企業は管理意識が高い」「情報開示が早い」と評価される傾向があります。
つまり、試算表は“評価を変える資料”ではなく、“信頼を積み上げる資料”なのです。
もうひとつ重要なのは、試算表が「改善の証拠資料」として機能することです。
たとえば、前期の決算書では在庫が多く資金繰りが悪化していた場合でも、月次試算表で在庫が減少し、現預金が増加していることを示せば、「経営改善が進んでいる」と説明できます。
担当者によっては、その努力を上司や審査部に伝えてくれるケースもあります。
この“担当者の理解を得る”ことが、次の融資チャンスを広げる鍵になります。
要するに、決算書が「過去の成績表」だとすれば、月次試算表は「今の健康診断書」です。
企業の現状と変化を正しく伝えるためのツールであり、銀行との対話を続けるための信頼の証なのです。
したがって、経営者が意識すべきは、「試算表で評価を覆す」ことではなく、「試算表で信頼を積み上げる」こと。
数字を整え、タイムリーに提出する姿勢が、銀行からの信頼と安心感を育てる最善の方法です。

たった1日の工夫で1年が変わる、決算書を“見せる経営”へ
ここまで見てきたように、銀行が企業を評価する際に最も重視するのは「決算書」、特に決算日1日の状態を切り取った貸借対照表(BS)です。
そのわずか1日の数字の整え方が、翌年の融資判断にまで影響するという事実は、経営者にとって見逃せないポイントでしょう。
しかし同時に、決算書は「過去を記録するだけの書類」ではなく、「未来の信用をつくる経営ツール」でもあります。
この意識の差が、銀行対応の明暗を分けるのです。
中小企業の多くは、「決算は税務処理のためのもの」と考えがちです。
もちろん税金計算のための決算は欠かせませんが、銀行はその同じ書類をまったく違う角度で見ています。
銀行が知りたいのは、「この会社は安定的にお金を回せるか」「来期も利益を出せるか」。
その判断材料が決算書であり、そこに企業の経営姿勢がすべて表れます。
だからこそ、“どう見せるか”を意識した決算づくりが欠かせないのです。

たとえば、決算直前に売掛金を回収し、棚卸資産を圧縮する。
必要に応じて、買掛金の支払いを翌月にずらす。
このような基本的な調整だけでも、決算書上の印象は大きく変わります。
「資金が滞留していない」「現金が潤沢にある」という印象を持たせるだけで、銀行の融資スタンスが前向きになることは珍しくありません。
決算書は、経営者が“自社の信用力をどう伝えるか”を形にしたものとも言えるのです。
また、月次試算表の提出や説明資料の添付など、決算後のフォローも大切です。
決算時に改善が間に合わなかった部分を試算表で補足し、「現状ではこう改善しています」と示すことで、銀行担当者に“姿勢”を伝えることができます。
評価そのものは決算書を基準に行われますが、次の決算に向けた準備としては十分な効果があります。
「数字を整える→説明する→信頼を積み上げる」という流れを習慣化することが、長期的な取引安定につながります。
当社では、こうした「見せる決算」「伝わる試算表」をテーマに、銀行評価を意識した決算対策・財務改善のサポートを行っています。
売掛金・棚卸資産・買掛金の最適化アドバイスから、補足資料(資金繰り表・在庫分析表など)の作成まで、経営者と並走しながら金融機関との信頼関係構築を支援しています。たった1日の数字の工夫が、1年の信用を変える。
「来期こそ銀行評価を上げたい」「決算をもっと戦略的に整えたい」と感じている方は、ぜひ早めの準備を始めましょう。
決算書を“見せる経営”に変えることで、資金調達も、経営の安心感も、確実に一歩前進します。
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