金利上昇が経営を直撃。今こそ“資金調達コスト”の見直しを
ここ数年、じわじわと進む金利上昇が、企業経営に確実な影響を与え始めています。
「以前と同じ金額を借りているのに、返済額が増えている」「決算を見直してみたら、支払利息が想定以上に膨らんでいた」そんな声を経営者から聞く機会が増えました。
特に、変動金利で借りている長期の証書貸付では注意が必要です。短期借入の場合は銀行担当者から随時説明を受けることもありますが、長期借入については“勝手に上がっていた”ことに気づかないケースも少なくありません。借入時の金利が0.9%だったものが、気づけば1.5%を超えていた、というのは決して珍しい話ではないのです。
金利が上昇すれば、当然ながら資金調達コストが上がり、経営に与えるインパクトは無視できません。
特に原材料費や人件費など、他のコストも同時に上昇している現在、金利上昇は“じわじわ効いてくる見えにくいコスト”として経営を圧迫します。
それにもかかわらず、「借入の金利は仕方ないもの」「銀行に言っても無理だろう」と諦めてしまう経営者も少なくありません。
しかし実際には、資金調達コストの見直しは、経営改善の重要な一手です。
売上を10%伸ばすことは容易ではありませんが、調達コストを0.3%下げることで、同等の利益改善効果を得られる場合もあります。つまり、“借入条件を整えること”は、経営の採算構造を強化するのと同じくらいの意味を持つのです。
ここで大切なのは、「単に金利を下げてもらう交渉」ではなく、「銀行が安心して良い条件を出したくなる企業になる」こと。
銀行にとっても、金利を下げるには理由が必要です。信用力が高く、長期的な取引を見込める企業ほど、優遇金利を提案しやすくなります。
逆に、決算書の内容や資金繰りに不透明さがある場合、銀行は慎重にならざるを得ません。
つまり、金利上昇局面では「金利を下げるお願い」だけではなく、「取引全体を整える経営戦略」が求められるのです。
この視点を持てるかどうかで、今後の資金調達コストの差は大きく開きます。
「金利は上がるもの」と受け身になるのではなく、「どう付き合うか」を戦略的に考える時代が来ています。

なぜ銀行は簡単に金利を下げてくれないのか?
「長年取引しているのに、金利を下げてもらえない」
「決算も黒字なのに、条件が良くならない」
こうした声をよく耳にします。ですが、その背景を理解すると、銀行側の判断にも“理屈”があることが分かります。
銀行が企業に融資を行う際、最も重視しているのは「返済可能性(信用リスク)」です。
企業の財務内容や業績、資金繰り、経営者の資質などを総合的に見て、“どの程度のリスクを取れるか”を判断しています。
そのリスクの度合いに応じて金利が設定されており、銀行の視点では「金利=リスクの対価」なのです。
特に近年は、金融庁がリスク管理の厳格化を求めており、担当者の裁量だけで金利を引き下げることが難しくなっています。
「担当者の一声で0.2%下げる」といった柔軟な対応がしづらくなり、内部審査や本部決裁が必要になるケースも増えました。
つまり、銀行にとっても“簡単に金利を下げられない仕組み”があるのです。
また、忘れてはならないのが、銀行自身の調達コストも上がっているという点です。
銀行は企業に貸すための資金を預金や日銀からの調達によって得ていますが、日銀の金利政策変更や市場金利の上昇によって、銀行の「仕入れコスト」も上昇しています。
このため、「基準金利が上がったので……」という説明には一定の合理性があるのです。
少し前であれば、金利が上がるのなら他行に借り換え!なんて簡単にできたものですが、市場全体が上がっているので、「簡単に他行も金利を下げて攻勢などかけて来ないだろう」と、銀行も強気な姿勢です。
とはいえ、「だから仕方ない」で終わらせてはいけません。
銀行は“リスクを抑えられる優良取引先”には、今でも競争力のある条件を提示しています。
つまり、金利交渉を成功させるには、「自社がどのように銀行のリスクを減らせるか」を明確に示すことがポイントです。
たとえば
- 財務内容の改善を進め、決算書を「見せられる内容」に整える
- 取引実績を積み重ね、信頼関係を強化する
- 預金取引や手数料取引を増やし、“取引総合評価”を高める
こうした取り組みを通じて、銀行の「この会社には優遇してもいい」と思わせる材料を増やすことができます。
金利交渉は“お願い”ではなく、“信頼の積み上げの結果”として成立する、これが現場での実感です。
金利上昇局面では、銀行も収益構造の見直しを迫られています。
そんな中で「自社のことを理解してくれる企業」「長く付き合える企業」を求めているのも事実です。
したがって、銀行の立場や制約を理解した上で、自社が“選ばれる取引先”になることが、金利を下げるための第一歩といえるでしょう。

交渉を有利に進める5つの実践ポイント

「金利を下げてもらう」ことは、単なる交渉術ではなく“企業としての信頼をどう積み上げるか”の総合戦略です。
ここでは、銀行との関係を良くし、交渉を優位に進めるための5つの具体的なポイントを紹介します。
(1) 預金シェアを高め、メインバンクとしての信頼を示す
銀行が取引先を評価する際、「融資残高」と「預金残高」のバランスは非常に重要です。
融資を受けている銀行に預金を多く置いておくと銀行としては「実質金利」が上がるため、引き下げの交渉材料にしやすくなるのです。
もし複数の金融機関に資金を分散している場合、ある銀行にとっての“取引シェア”が低くなり、優遇対象から外れることもあります。
資金に余裕があるときは、一定割合をメインバンクに集中させ、「この会社はうちとの関係を重視している」と伝わる形を作りましょう。
特に最近は銀行振り込み手数料も高いため預金をネットバンクに集中させて、「融資は銀行・預金はネットバンク」となっている会社もありますが、このような形は極力避けたいものです。
結果的に、金利条件や融資スピードにプラスの影響を与えます。
(2) 役務収益に貢献し、銀行の「収益パートナー」になる
銀行は融資だけでなく、手数料収入(役務収益)を重視しています。
たとえば、
- 定期預金や投資信託を銀行経由で活用する
- 企業保険(生命保険・損害保険)を銀行から加入する
- 給与振込・売上入金をその銀行に集約する
といった取引を通じて、銀行の「収益に貢献する企業」として評価されます。
金利は下げられなくても、総合的な取引実績が積み上がれば、優遇条件の交渉材料になります。
(3) サブバンクにも相談し、競争原理を活用する
メインバンクに頼り切りになっていると、条件改善の交渉が進みにくくなります。
そんな時は、信用金庫・信用組合・地方銀行など、他の金融機関に見積もりや一部借換え相談を行いましょう。
「他行ではこの条件だった」と実際の提示条件を見せることで、メインバンク側の対応が変わるケースは多いです。
ただし、単なる“価格競争”ではなく、関係性の中で上手に使うことが大切です。
(4) 融資形態・返済期間を見直す
金利引き下げが難しい場合でも、「返済期間の延長」や「借入の一本化」により、毎月のキャッシュフローを改善できます。
また、プロパー融資(保証なし)から信用保証協会付き融資に切り替えることで、リスクが減り、結果的に金利を下げやすくなることもあります。
返済負担を軽減し、資金繰りを安定させる発想も重要です。
(5) 決算書・資金管理体制を“見せられる形”に整える
銀行が最も重視するのは「数字の裏付け」です。
最新決算の早期提出や、資金繰り表の提示、事業計画書の作成など、「情報開示の質」を高めることで、信頼は確実に上がります。
「この会社は管理がしっかりしている」と思われること自体が、金利交渉の最大の武器になります。
これら5つのポイントは、すぐに大きな成果が出るわけではありませんが、確実に“銀行の見る目”を変える要素です。
重要なのは、交渉の場だけで頑張るのではなく、「普段の取引全体を整えること」。
そうすることで、銀行側から「この会社には良い条件を提案したい」と思ってもらえるようになります。

“取引の質”を高めることが金利対策の最短ルート
金利が上昇している今こそ、企業に求められているのは「調達コストの最適化」と「取引の見直し」です。
単に金利を下げてもらうことを目的とするのではなく、銀行から“信頼される取引先”として認められること。
その結果として、良い条件が得られる——この順番を意識することが、金利上昇局面の最大のポイントです。
銀行取引を通じて得られるメリットは、金利条件だけではありません。
資金繰りの相談、設備投資の情報、補助金制度の紹介など、金融機関は経営を支える“情報のハブ”でもあります。
そのためには、単なる「お金を借りる関係」ではなく、「事業を共に育てるパートナー」として関係を築くことが重要です。
日頃から自社の状況をオープンに共有し、相談できる関係を作っておくことで、必要な時にスピード感ある支援を受けられるようになります。
また、金利対策を考える際は、「短期的な交渉」だけでなく「長期的な経営体質の改善」にも目を向けましょう。
・借入依存度を下げるための利益体質づくり
・資金繰りの見える化とキャッシュフロー管理
・複数行との関係を戦略的に設計する
こうした取り組みが結果的に、銀行の評価を高め、調達コストを下げる好循環を生み出します。
とくに、決算書の作り方や説明の仕方は、金利交渉に直結します。
銀行が見ているのは「数字そのもの」と「数字の裏にある経営姿勢」です。
「なぜ利益率が下がったのか」「どのように改善を図っているのか」を自分の言葉で説明できる経営者は、金融機関から信頼を得やすいものです。
つまり、金利交渉の本質は“対話力”でもあるのです。
金利上昇は、どの企業にも避けられない外部要因です。
しかし、その影響を最小限に抑え、むしろ経営を強くする機会にもできます。
大切なのは「金利の高さ」ではなく、「金利に負けない経営構造をつくること」。
そのためには、銀行との関係を見直し、調達コストを“管理できる領域”に戻すことが第一歩です。
もし、「自社の金利条件を見直したい」「銀行との関係性を整理したい」「融資の組み方が適正か客観的に見てほしい」と感じているなら、早めの専門相談をお勧めします。
外部の視点で資金調達戦略を整理することで、これまで見えなかった改善ポイントが必ず見えてきます。
金利上昇時代こそ、経営者に求められるのは“攻めの財務”。
日々の数字を読み解き、銀行と信頼を築くことが、結果として「強い資金繰り」を生み出す最短ルートです。
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