融資が通らないのはなぜ?資金調達余力を見誤る企業が増えている現実
「銀行に融資を申し込んだのに、思ったより貸してもらえなかった」「以前は簡単に通ったのに、今回は慎重な対応をされた」──
そんな声を、ここ数年でよく耳にします。特に中小企業の経営者の間では、「銀行が貸してくれない」「審査が厳しくなった」と感じる方が増えています。
実はその背景には、企業側と銀行側の“見ているポイントのズレ”があるかも知れません。
企業は「業績が悪くないのになぜ?」と感じていても、銀行は「返済余力や財務体質に不安がある」と判断しているケースが少なくありません。
つまり、経営者自身が“自社の資金調達余力”を正確に把握できていないことが、融資が通らない最大の原因なのです。
もうひとつの大きな要因は、金融環境の変化です。
コロナ禍で実行された「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保)」の返済が本格化し、多くの企業が返済負担を抱えています。
その中で、信用保証協会による代位弁済(企業の代わりに保証協会が銀行へ返済する制度)が増加しており、コロナ前より慎重な融資姿勢を取るようになっています。
つまり、銀行側も「貸すリスク」を厳しく見極めざるを得ない状況なのです。
このような時代に、従来のように「資金が必要になったから銀行へ相談に行く」というスタンスでは、思うように資金調達できないのが現実です。
これからの経営者に求められるのは、“必要な時に借りられる企業体質”を平時から整えておくこと。
そして、「銀行が貸したくなる会社」になるための財務・経営管理を日常的に行うことです。
具体的には
• 自社の調達余力(どれだけ借りる力があるか)を客観的に把握する
• 銀行が決算書でどの部分を見ているのかを理解する
• 無理のない投資・借入計画を立てておく
この3つが基本です。
特に「どの程度まで融資を受けられるのか」「銀行がどう見ているのか」を把握しておくことが、資金調達の成功を大きく左右します。
資金繰りは、いわば企業経営の“血液”。
一時的にショートしてもすぐに立て直せる体質か、あるいは赤字でも将来性を感じてもらえるか、
その判断は、日頃の財務管理と情報発信の積み重ねで決まります。

銀行が貸したくなる企業に共通する“3つの基礎体力”とは
銀行は企業を評価する際、「いま利益が出ているか」だけで判断しているわけではありません。
大切なのは、安定的に返済できる力があるかどうか、そして将来的に成長を続けられるかという点です。
そのため、銀行が“貸したい”と感じる企業には、必ず共通した「3つの基礎体力」が備わっています。
① 安定した利益体質を持っている(損益管理の力)
まず第一に重要なのは、継続的に利益を出せる体質です。
赤字の年度があること自体は問題ではありません。重要なのは、「利益を出せる仕組みを持っているか、修正力があるかどうか」。
たとえば、売上の変動が大きくても、粗利率を一定に保ち、固定費を抑えることで、収益性を確保できている企業は強いです。
銀行は決算書を見て、単年度の結果ではなく“利益の安定度”を見ています。
毎月の試算表や月次決算を整備し、PL(損益計算書)を常に把握している企業ほど、信頼度は高まります。
「経営数字を理解し、管理できている」こと自体が、銀行にとっては“経営力”の証拠になるのです。
② キャッシュフローが強い(資金管理の力)
次に見られるのは、現金の流れ=キャッシュフローの安定性です。
売掛金の回収が遅れていないか、買掛金の支払いバランスは取れているか、手元資金がどの程度確保されているか──。
銀行はこうした「資金の流れ」を非常に重視します。
たとえば、PL上は黒字でも、キャッシュが枯渇している企業は融資が難しくなります。
逆に、利益は小さくても資金繰り管理が行き届き、手元流動性が確保されている企業は「しっかりした経営をしている」と高く評価されます。
日々の現金残高を意識し、資金繰り表を更新している経営者は、銀行からも「数字に強い」「管理意識が高い」と見られ、結果的に信用度が上がります。
③ バランスシートが健全である(財務構造の力)
3つ目は、財務バランスの良さ=BS(貸借対照表)の健全性です。
銀行が特に注目するのは、自己資本比率・負債比率・借入金依存度など。
借入が多くても、利益を内部留保し、自己資本を厚くしていれば問題ありません。
逆に、利益が出ていても、資金を取り崩して借入金返済に充てている状態が続くと、財務体力は弱く見られます。
この3つの基礎体力──損益・資金・財務のバランスを整えている企業こそが、銀行から見て“貸したい会社”です。
逆にいえば、どれか一つでも弱いと、融資審査では慎重な評価になります。
銀行融資は、単なる「資金のやり取り」ではなく、「経営体質の評価」そのもの。
だからこそ、決算書の中身を磨き、日常の経営管理を整えることが、最も確実な融資対策なのです。

自社の調達余力を見極めるための実践ステップと専門家の活用法
「銀行が貸したくなる会社」になるためには、まず自社の資金調達余力を正確に把握することが欠かせません。
資金調達余力とは、簡単に言えば「自社がどのくらいの金額を、どの条件で借りることができるか」という“信用力の実力値”です。
多くの経営者は「決算書を見て利益が出ているから大丈夫」と考えがちですが、銀行の評価はそれほど単純ではありません。
ここでは、調達余力を見極めるための実践的なステップを3段階で整理します。
① 決算書の再点検と現状分析
まず行うべきは、過去3期分の決算書を並べて、「何が改善し、何が変わっていないか」を確認することです。
たとえば、売上や利益は伸びていても、手元資金が減っていたり、借入残高が増えていたりするケースは少なくありません。
銀行はこの「財務バランスの変化」を重視します。
単年度の結果よりも、3年・5年単位での財務推移を見ることで、企業の安定性や成長性を判断しているのです。
この段階では、PL(損益計算書)だけでなく、BS(貸借対照表)・CF(キャッシュフロー計算書)を合わせて分析し、「利益と資金の動きが整合しているか」を確認することがポイントです。
② 銀行格付を意識した財務診断
次に、自社の「格付け」を意識して財務分析を行います。
銀行は企業ごとに内部格付(スコアリング)を行い、そのランクによって融資条件や金利を決めています。
主に評価される指標は、
- 債務償還年数(返済可能期間)
- 自己資本比率
- 経常利益率
- 流動比率(短期支払能力)
などです。
これらを自社で把握しておくと、「どの数値を改善すれば格付が上がるのか」が明確になります。
数字を“経営の言語”として扱う姿勢が、銀行からの信頼につながります。
③ 改善シナリオの策定と専門家の伴走
分析ができたら、次は「どう改善していくか」をシナリオに落とし込みます。
ここで重要なのは、「単なる節税」や「経費削減」ではなく、銀行が評価する財務改善に焦点を当てることです。
改善の積み重ねが、結果的に「調達余力の底上げ」につながります。
ただし、これを経営者だけで判断するのは難しいのが現実です。
税理士は税務・申告の専門家ですが、将来の融資戦略や銀行交渉の観点まではカバーしていない場合もあります。
そこで有効なのが、外部CFO(財務顧問)や資金調達の専門家を活用する方法です。
外部の専門家が第三者の視点で決算書を分析し、銀行目線で「どの数値をどう整えるべきか」を整理すれば、融資の通りやすさは格段に変わります。
当社でも、企業の調達余力を数値化し、「今の状態でいくら借りられるか」「次の融資のために何を強化すべきか」を明確にするサポートを行っています。
資金調達の本質は、単に“借りる”ことではなく、“借りる力を育てる”こと。
自社の実力を正確に把握し、着実に改善を積み上げることで、銀行との信頼関係は確実に強まります。

今こそ「資金調達できる会社」へ。財務の見える化から一歩を踏み出そう
資金調達は、企業の成長戦略を実現するための“エンジン”です。
どれだけ良い商品やサービスを持っていても、資金がなければ投資も人材採用もできません。
そして「借りたいときに借りられる会社」になれるかどうかは、日々の財務管理の積み重ねにかかっています。
銀行融資を成功させるための第一歩は、自社の調達余力を正確に把握することです。
「いくら借りられるか」ではなく、「なぜその金額なら銀行が貸したくなるのか」を理解することが重要です。
この視点を持てば、資金調達は単なる借入行為ではなく、“経営の信頼構築”へと変わります。
財務の「見える化」で経営を強くする
銀行が重視するのは、過去の数字だけではありません。
それ以上に、「この会社は今後も安定して利益とキャッシュを生み出せるか」を見ています。
つまり、決算書の内容を整理し、財務の見える化を進めることが何よりの信頼材料になります。
たとえば、
- 月次試算表を常に更新し、利益や資金の推移を可視化する
- 資金繰り表を作成して、先の支払い・回収スケジュールを把握する
- 投資や借入をする際は、将来のキャッシュフローへの影響を試算しておく
こうした「財務を説明できる状態」が整っていれば、銀行との面談でも説得力が増し、融資の可否に直結します。
経営者がやるべき3つの実践アクション
- 自社の調達余力を“数値”で把握する
銀行の格付け視点を理解し、自社の財務指標を定期的にチェックしましょう。 - 財務体質を継続的に改善する
自己資本比率を高め、キャッシュフローを安定させる取り組みを続けることで、銀行の信頼度は確実に上がります。 - 専門家と伴走しながら資金戦略を立てる
外部CFOや財務アドバイザーとともに、融資・投資・返済計画を一体で考えることが、調達力強化の近道です。
これらは、すぐに結果が出るものではありません。
しかし、半年・1年と続けていくうちに、銀行との関係性や資金繰りの安定度が明確に変わってきます。

“融資が通る会社”は、準備の質で決まる
銀行融資の結果は「運」ではなく「準備」で決まります。
いざという時に資金を引き出せる会社は、決して偶然そうなっているわけではありません。
平時から決算書を磨き、財務を整え、数字で自社の成長を語れる体制を築いているのです。
「資金調達できる会社」とは、単に資金を借りられる会社ではなく、“銀行から選ばれる会社”のこと。
その第一歩が、財務の見える化と調達余力の把握です。
「自社の調達余力を客観的に知りたい」「次の融資に向けて財務体質を整えたい」という方は、ぜひご相談ください。
当社では、決算書の分析から銀行対策まで、企業の成長を支える“資金調達パートナー”としてサポートしています。
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