
「受注が増えても、なぜかお金が残らない」──小規模建設業に多い“資金の盲点”
「仕事の依頼は順調に増えているのに、なぜかお金が残らない。」
スタートアップや小規模の建築・建設業の経営者から、よく聞く言葉です。
売上は上がっているはずなのに、資金繰りが苦しく、支払いのたびにヒヤヒヤする――そんな状態になっていませんか?
実は、これはこの業界に特有の構造的な問題でもあります。
建設業は案件ごとの金額が大きく、工期も長いため、「売上」と「入金」のタイミングがズレやすい業種です。
一方で、材料費や外注費などの支払いは前倒しで発生します。
つまり、黒字でもキャッシュが不足しやすい。
この「利益があるのにお金がない」状態こそが、資金繰りを圧迫する最大の原因です。
さらに問題を深刻にしているのが、“経理や財務への意識の薄さ”です。
日々の現場に追われ、経理は後回し。試算表も「決算が近づいてから税理士任せ」という会社が少なくありません。
その結果、銀行に融資を申し込もうにも、必要な資料(試算表・資金繰り表・借入一覧など)が整わず、
「準備不足」と見なされて融資が通らない。
結局、信販系やノンバンクの高金利融資でしのぐしかなくなり、金利負担で利益がさらに圧迫されたり、利用があるだけで民間金融機関はNG!なんてこともあります。
この“悪循環”が、建設業では驚くほど多いのです。
本来、銀行融資とは経営を助けるためのもの。
しかし、「準備が整っていない」「経理が遅れている」だけで、そのチャンスを逃してしまう。
この構造的な課題に気づいていない会社ほど、売上を追うことに集中し、数字の管理をおろそかにしてしまいます。
現場では「今月も工事を取らなければ」「次の受注を確保しよう」という意識が先に立ちますが、
どれだけ受注が順調でも、お金の流れが整っていなければ経営は不安定なままです。
支払い期日が迫るたびに慌てて資金をかき集める――そんな“後追い型の資金繰り”が続く限り、
本業の努力が報われにくい構造から抜け出せません。
この「売上はあるのに資金が回らない」現象には、実は“お金の流れの設計”ができていないという明確な理由があります。
つまり、経理や資金繰りを「現場の感覚」でなんとなく管理している状態。
これを意識的に整えるだけで、経営の安定度は大きく変わります。
次章では、この“経理後回し経営”がなぜ資金を苦しめるのか、
そして、どうすれば悪循環を断ち切れるのかを具体的に見ていきましょう。

“経理後回し経営”が生む、建設業の負のスパイラル
建設業の現場では、「数字よりもまず仕事を取る」「工事を完了させる」ことが最優先になりがちです。
もちろん、その姿勢自体は間違っていません。
しかし、この“現場第一主義”が強すぎるあまり、経理や資金繰りを後回しにしてしまうと、いつの間にか会社の資金が回らなくなっていく――そんなケースを何度も見てきました。
特に小規模の建築・建設会社では、経理担当がいない、もしくは社長自身が兼務という形が多いです。
月次の試算表も税理士任せで、下手をすれば決算の直前。
この状態では、「今、会社にお金がいくら残っているのか」「どの工事で利益が出ているのか」が把握できず、“感覚経営”に陥ります。
そしてお金が足りなくなって初めて、銀行に駆け込む。
ところが、その時点ではすでに手遅れということも少なくありません。
銀行は融資を行う際、「決算書」や「直近の試算表」「資金繰り表」などの資料を求めます。
これが用意できない、または内容が粗いと、「管理が甘い会社」と判断され、融資を見送られてしまうのです。
このとき多くの経営者はこう言います。
「数字が苦手なんです」「経理はうちの奥さんがやってて…」
しかし、銀行は“経営の数字”で会社を判断します。
どれだけ現場で汗を流しても、どれだけ真面目に経営していても、数字で信頼を証明できなければ、金融機関は動きません。
結果、銀行融資が受けられず、急場しのぎで信販系やノンバンクの高金利ローンを利用。
金利負担が増えて利益が圧迫され、次第にキャッシュが枯渇していく。
この“後追い資金調達”が続く限り、会社は常に資金繰りに追われる状態になります。
こうした悪循環を断ち切るには、
「現場の延長線上で経営を考える」発想から、「経理・財務を経営の中心に置く」意識へ変えることです。
数字の把握は“経理の仕事”ではなく、“経営の武器”です。
試算表がリアルタイムで見られる体制を作るだけでも、資金ショートのリスクは大きく減ります。
経理を整えることは、売上を減らすことではありません。
むしろ、資金を循環させて売上を守るための“防御力”です。
次章では、この悪循環から抜け出すために、銀行融資を“ブースター(加速装置)”として活かす方法をお伝えします。

銀行融資は“最後の手段”ではなく“経営を加速させるブースター”
多くの小規模建設業の経営者が、「融資=困ったときの最終手段」と考えています。
しかし、実際にはその逆です。
銀行融資は“資金繰りを守るため”ではなく、“経営を加速させるため”に使うものなのです。
建設業は他の業種に比べて、1件ごとの金額が大きく、仕入・外注・人件費の支払いが先行します。
そのため、どれだけ利益が出ていても「キャッシュ不足」に陥りやすい構造です。
この“入金までのタイムラグ”を埋めるのが、銀行融資の本来の役割です。
ところが、多くの会社は「資金が足りなくなってから」動きます。
資金ショートが近づいてから銀行に行っても、試算表や資金繰り表が整っていなければ審査に時間がかかり、結局間に合わない。
そして“高金利のつなぎ融資”で凌ぐしかなくなる――このパターンが本当に多いのです。
逆に、資金繰りに余裕があるうちに借入を検討する会社は強い。
銀行は「資金が足りている会社」ほど融資をしやすい傾向があります。
これは意外に感じるかもしれませんが、資金繰りが安定している会社ほど、
返済リスクが低く、信用格付も高く評価されるためです。
だからこそ、「まだ大丈夫」と思っている段階で次の投資や資金繰りを計画しておくことが大切です。
また、融資には長期借入金と短期借入金の2種類があります。
創業期や安定フェーズでは、長期借入で設備資金や運転資金を確保することが基本です。
一方、今後の受注が大きく見込まれる場合は、短期借入金をうまく組み合わせることで、支払いと入金のズレを埋め、資金繰りを安定させることができます。
そして、銀行融資をスムーズに進めるための“鍵”が、
「資金繰り表」と「試算表」の整備です。
どの月にどれだけ資金が出て、いつ入金されるのか。
赤字になる月があっても構いません。
重要なのは、“なぜそうなるのか”を説明できること。
これだけで、銀行の信頼度は格段に上がります。
銀行融資は、単なる「資金の補填」ではなく、「経営を支える仕組み」として機能します。
つまり、正しく使えば銀行は“経営のブレーキ”ではなく、“アクセル”になるのです。

「お金の仕組み化」で経営は安定する――外部CFOの力を借りるという選択
小規模やスタートアップの建築・建設業の経営者にとって、「お金の管理」はどうしても後回しになりがちです。
理由は明確で、日々の現場対応や受注活動に追われるからです。
しかし、経理や資金繰りは“経営の裏方”ではなく、会社を守るための生命線です。
ここを仕組み化できるかどうかで、数年後の会社の姿は大きく変わります。
まず理解しておきたいのは、「経営者がすべてを自分でやる必要はない」ということ。
特に小規模の建築・建設業では、社長が現場にも出て、営業もして、経理も見る――
まさに“ワンオペ経営”になりがちです。
しかし、この状態ではどれだけ頑張っても数字の管理までは手が回りません。
結果として、融資に必要な試算表や資金繰り表が整わず、チャンスを逃すことになるのです。
ここで有効なのが、「外部CFO」や「財務コンサルタント」などの外部活用です。
社内に経理担当を置くほどの余裕がなくても、外部の専門家に月次の数字管理や資金繰り表の作成を委託すれば、経営者は安心して本業に集中できます。銀行担当者に相談してみるのも良いでしょう。
また、銀行との交渉や資金計画を一緒に立てることで、資金調達のスピードと精度は格段に上がります。
実際、当社が支援したある建設会社では、
月次試算表の整備と資金繰り表の導入により、資金ショートのリスクを事前に察知できるようになりました。
結果として、銀行への融資申請もスムーズになり、高金利ローンを使う必要がなくなっただけでなく、銀行から「今後も支援したい」と言われる関係性を築くことができました。
つまり、経理や財務を「苦手な分野」として避けるのではなく、「外注化して仕組み化する」ことが最も効率的な解決策なのです。
経理や財務は単なる数字の処理ではなく、会社の将来を描くための“羅針盤”です。
どれだけ技術力があっても、資金が止まれば事業は続きません。
逆に、資金繰りの仕組みが整えば、安定した経営基盤の上で安心して受注を増やせるようになります。
「現場が忙しくて経理まで手が回らない」
「銀行に何をどう説明したらいいのかわからない」
そんな経営者こそ、今が見直しのタイミングです。
外部の力を上手に使い、経理を“仕組み”として整えることで、あなたの会社は「資金に追われる経営」から「資金で攻める経営」へと変わります。




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