まず“自社の借入残高シェア”を数値で把握する(定義・算式・可視化の型)
結論、借入残高シェアは「定義を決めて、毎月同じ型で可視化」すれば迷いません。定義はシンプルで、各銀行の期末借入残高÷全銀行の期末借入残高。例:総借入5,000万円、A3,000・B2,000ならA60%・B40%です。
まずはスプレッドシートに
①銀行名
②残高(短期・長期・当座貸越利用額)
③信用保証協会付かプロパーか
④金利・返済条件
⑤担保・保証の有無
⑥当期の新規実行/返済額
⑦期末残高とシェア率
を並べます。
注意点は「集計の範囲と時点の統一」。
手形貸付や当座貸越は“期末利用残高”、コミットラインは“実行ベース”、リスケ中は“帳簿残高”で固定し、メモ欄でイレギュラーを明示しましょう。
見える化は、円グラフ(残高シェア)+積み上げ棒(保証付き/プロパー比率)+折れ線(総借入推移)の三点セットが実務的です。
仮ルールは「メイン50%前後・サブ30%以内・その他20%」。
ここで重要なのが預金の同時管理です。
別シートに銀行別預金残高と主要フロー(売上入金・仕入・給与・税金)を記録し、残高シェアとの乖離を色分け。
月次の締めでは
①借入・預金の差分確認
②プロパー比率の増減
③次月の資金イベント(賞与・設備・納税)を注記。
さらに13週資金繰り表とリンクさせ、短期の資金山谷を見える化すると、借換や新規実行の“前さばき”ができます。
運用体制としては、財務責任者→社長→取締役会の順にダッシュボードを回付し、銀行面談前に“現状の重心”を一致させること。
これだけで、以降の交渉は一段と速く、論点は本質に絞られます。

ありがちな失敗①「似たりよったり」―メイン不在は融資に効かない
残高シェアがA35%・B35%・C30%…の“均等割り”は、一見リスク分散に見えて、実は誰も責任を持たない状態です。
つまり業績が悪化した瞬間、各行は横目で様子見し、追加融資は止まります。
「いつでも引けるようにメインバンクになるな」なんて表現もあります。
逆に、明確なメイン(目安50%前後)がいると、「まずメインが守る→他行が追随」という連鎖が起き、資金繰りの下支えになります。
メインを立てる狙いは三つ。
①意思決定の速さ(稟議ルートが短い)
②情報の一元化(モニタリングと説明負担が減る)
③“当事者意識”の醸成です。
是正は“設計→移行→定着”の三段で進めます。
設計では、来12か月の資金計画を作り、運転・設備・季節資金の役割を明文化。
移行は、借換・新規実行などの更新タイミングでメイン寄せを徹底し、サブは目的特化に限定します。
定着では、年次の「アライメント面談」で、格付け前提・金利レンジ・コベナンツ運用を合意し、四半期レポート(KPI/資金繰り)を定期提出。
実務のコツは“数値の線引き”。例:メイン≧45~55%、サブ≦30%、その他≦20%。さらに、同一銀行内の質も重要で、保証付きだけで膨らませず、プロパーを少額でも混ぜて“本気度”を可視化します。
現状が均等割りなら、まずは次回借換の30%をメインに寄せる“第一歩”を。
一度で理想形にせず、段階的に重心を移すのが現実的です。
最後に、社内にも“誰がメインか”を宣言し、窓口・決裁権限・面談頻度を固定化。
銀行は“扱いの差”で関係の深さを測ります。設計された差が、いざという時の一歩目を決めます。

ありがちな失敗②「保証付きばかり」―プロパーがないと銀行は本気で守らない
信用保証協会付きばかりで残高を積むと、見かけのシェアは大きくても、銀行の“痛み”が伴わず、逆風時に踏み込みが弱くなります。
いざ資金繰りが切迫しても、銀行側の損失は保証協会に肩代わりされるため、条件変更・新規つなぎ・迅速な稟議に腹落ちしにくい。
これでは“真のメイン”とは言えません。
是正の第一歩は、プロパー(銀行自前の融資)を小口・短中期・明確な資金使途で積み上げ、実績を作ること。
たとえば「季節資金1,000万円・12~18か月返済」「在庫増加の裏付け資料つき」「売掛回収表と13週資金繰りで返済原資の見える化」というように、銀行稟議の論点(使途・回収・担保・スポンサー意志)を先回り資料で潰します。
交渉では“置換”より“上積み”が有効です。既存保証付の置換一本槍は、協会枠や社内ルールに阻まれやすい。
むしろ増加分や新規案件の一部をプロパーで走らせ、保証付:プロパー=7:3→6:4→5:5へ段階的に質を改善します。
この過程で、
①やや高めの金利を「関係強化プレミアム」として受容
②軽い情報コベナンツ(四半期KPI報告、資金繰り表提出)でモニタリング負荷を相殺
③担保余力や第三者保証の方針を事前に共有――をセットで提示すると通りが良い。
プロパーを混ぜた途端、銀行は“共に痛む”立場となり、モニタリング密度・助言の質・緊急時の即応性が段違いに上がります。
結果、与信環境が悪化しても「まず動くのはうちだ」という当事者意識が生まれ、他行の追随も得やすくなります。

ありがちな失敗③「預金が合わない」―預金配分は“疑似担保”、ズレは信用低下
預金は銀行にとって「相殺可能性のある安全資産」。
にもかかわらず、借入シェア50%のA行に預金500万円、シェア20%のB行に2,000万円…のような逆配分は、A行の心理的ハードルを上げます。
貸出で最もリスクを負っているのに、平時の資金は他行へ――この不整合は、追加融資・条件変更の意思決定を鈍らせる直接要因です。
原則はシンプルで、預金配分≒借入残高シェア。
厳密一致は不要ですが、乖離が20ptを超える偏りは是正対象。
実務では
①主要フロー(売上入金・仕入・給与・税金・家賃)を列挙し
②決済口座をメイン行に集約
③運転資金の1~1.5か月分を常時キープ
④月末にCMS/SWEEPや定額振替で比率を自動調整
⑤四半期ごとに比率レポートを銀行へ共有――の5点を徹底します。
特に売上入金口座は信用の土台。
与信強化を狙う行に移すだけで、社内稟議の空気が変わります。一方で“見せ金”は逆効果。
決算直前だけ残高を寄せても、平時の平均残高・入出金回転で見抜かれます。
当座貸越枠×預金のネットエクスポージャー設計も効きます。例:当座2億円枠に対し、平時の預金最低ライン5,000万円、繁忙期は一時的な下振れを可、など。
さらに、サブ行には用途特化口座(助成金受領・特定設備返済・海外送金)を割り当て、役割を明文化。
最後に、預金の再配分は一気にではなく自然流量で。
既存入金の振替指示、請求書の口座変更、定例支払のデビット口座切替を、1~2サイクルで順次移すと摩擦が少ない。
預金は“好意の通貨”。配分を揃えるほど、銀行は速く・深く動きます。
また、預金平均残高を置くと、銀行的には「実質金利」が上がるため喜ばれます。

メイン50%目安・プロパー導入・預金整合で“銀行が動く”体制を作る
最終結論は明快です。
①メインを立てて重心を寄せる
②プロパーを計画的に混ぜて銀行の自己リスクを共存させる
③預金配分を借入残高シェアに概ね揃える――この三点を月次で運用すれば、いざという時に“まず動く銀行”を確保できます。
逆に、均等割り・保証付き偏重・預金の逆配分は、平時は見えにくくても、環境が悪化した瞬間に資金繰りへ直撃します。
実務に落とし込むには、次のロードマップが有効です。
Step1:過去12か月の「銀行別・保証別・期末残高」と「預金配分」を棚卸しし、ダッシュボード化。
Step2:次の借換/新規実行イベントに合わせて“メイン寄せ”の方針を社内合意。
Step3:季節資金や在庫増資金など“小口・短中期”からプロパーを試走。
Step4:入金口座や給与・税金など基幹フローをメインへ集約、CMS等で月末比率を自動調整。
Step5:四半期ごとに各行へ同一フォーマットで数値共有し、来期の資金計画・KPI・コベナンツ感度を擦り合わせます。
留意すべきは“一気に理想形へ”ではなく、“段階的に”。
移行のたびに社内手続や取引先通知が発生するため、業務負荷を見据えたスケジューリングが欠かせません。
貴社の売上、EBITDA、在庫・債権回転の実数を基に、最適なメイン比率・プロパー比率・預金配分を設計し、銀行面談のアジェンダ作成から同席まで伴走します。
まずは現状のダッシュボード作成(無料簡易診断)から着手し、12か月で“銀行が動く”資金調達体制を一緒に整えましょう。




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