融資を決めるのは銀行、でも動かすのは“担当者”
銀行融資というと、「銀行が決めるもの」と思っている経営者は多いでしょう。
たしかに最終的な決裁は「銀行という組織」が行います。
しかし、実際に融資の話を動かしているのは――“担当者という個人”です。
この一点を理解しているかどうかで、資金調達の結果は大きく変わります。
なぜなら、担当者が「この会社を支援したい」と思えば、稟議を通すために社内で奔走してくれますし、
逆に「この会社はやりにくいな」と感じれば、そもそも話が前に進まないこともあるからです。
私自身、信用金庫に長く勤務していた経験から言えるのは、
銀行内部では案件が正式に審査部へ上がる前に、“担当者の温度感”で選別されているという現実です。
書類上は「検討中」となっていても、担当者が熱意を持って進めなければ、
融資が通る可能性はほとんどありません。
実際、「銀行に融資を断られた」と思っていた案件の中には、
本当は担当者レベルで止まっていた、つまり“審査部にすら上がっていなかった”ケースも少なくありません。
担当者が忙しい、情報が足りない、社内での説明材料がない――
そんな理由で“進められなかっただけ”ということも多いのです。
だからこそ、経営者にとって大事なのは「銀行」との関係ではなく、
「担当者」との関係づくりです。
銀行という巨大な組織は、内部の仕組みが複雑で、
ひとつの融資を通すまでに、担当者→上席→審査部→本部決裁といったいくつものステップがあります。
その最初の扉を開ける鍵を持っているのが、担当者なのです。
ここで誤解してはいけないのは、
「担当者に媚びる」ことではありません。
大切なのは、担当者が「この会社なら話を進めやすい」と感じるような関係性を築くことです。
それはつまり、情報提供の速さ、説明のわかりやすさ、誠実な対応など、
“担当者の社内説明を助ける姿勢”を持つことなのです。
銀行融資は「組織対組織」ではなく「人対人」で進むもの。
その最初の一歩を理解しているかどうかが、結果を大きく左右します。
経営者がこの視点を持つだけで、資金調達のスピードも成功率も、確実に変わっていきます。
担当者が動きやすくなる“情報提供力”を持つ
融資の審査を進めてもらう上で、最も大切なことのひとつが「情報提供の質と速さ」です。
多くの経営者が、「銀行は情報を持っていくと喜ぶ」とは知っていても、
実際には「求められてから出す」「資料を探すのに時間がかかる」ケースが少なくありません。
しかし、銀行担当者の立場で見れば、この“タイムラグ”こそが融資が進まない最大の理由なのです。

銀行員は日々、数多くの融資案件以外のタスクを抱えています。
融資を進める際には、社内の上席や審査部に提出する「稟議書(りんぎしょ)」を作成しなければなりません。その稟議書を作るためには、会社の業績データ、資金繰りの現状、借入状況、事業の見通しなどを決裁者に説明する必要があります。
これらを担当者が自分で調べてまとめるのは膨大な時間がかかるため、“ポイントを押さえてプレゼンしてくれる会社”は、それだけで優先順位が上がります。
逆に、資料を求めても出てこない、出てきても内容が不十分、あるいは「税理士に聞かないとわからない」といった状態では、担当者は社内で話を進めにくくなり、結果的に“後回し”になります。
つまり、「資料を早く出せる会社」は、それだけで銀行の信頼を得ているのです。
ここで準備しておくべき基本資料を挙げると
・直近の試算表(最低でも3か月以内)
・資金繰り表(今後6か月〜1年分)
・既存借入金一覧表(返済予定を含む)
・事業計画書(新規借入や投資がある場合)
この4点は、融資を進めてもらうための“最低限の武器”です。
また、書類を提出する際には、「単に渡す」だけでなく、
「この数字の背景」「今後の改善策」「資金の使い道」を簡潔に説明できることが重要です。
担当者が稟議書を書く際、その説明部分を“ほぼ引用できる”くらい明確に話せるとベスト。
担当者にとっては、あなたの説明がそのまま社内でのプレゼン資料になるのです。
もうひとつのポイントは、「定期的に情報を共有する習慣」を持つこと。
融資の相談があるときだけ資料を出すのではなく、
四半期ごとに業績報告を兼ねて銀行担当者に説明の場を設ける。
これだけで、「この会社は信頼できる」という印象を強く残すことができます。
銀行が見ているのは“数字”だけでなく、“数字の扱い方”。
誠実でスピーディーな情報提供こそ、担当者の信頼を得て、融資をスムーズに進める最大のカギなのです。
接点づくりとコミュニケーションで“人”を味方に
融資を進めるうえで最も重要なのは、「人としての関係をつくること」です。
多くの経営者が、資金が必要になったタイミングで銀行に相談をしますが、
そのとき初めて担当者に会いに行くようでは、どうしても話がスムーズに進みません。
なぜなら、銀行担当者は、会社の過去の取引データは把握していても、日々の経営の流れや現場の温度感までは理解していないからです。
普段からの接点が少ない企業ほど、「この会社は何をしているのか」「事業の特徴は何か」といった情報が欠けており、
いざ融資の相談を受けても、担当者はまず“状況把握”から始めなければならないのです。
それに対して、定期的に面談や報告をしている企業であれば、話はまったく違います。
「前回の融資実行からからどう変わったか」「新しい取り組みがどこまで進んでいるか」が共有できているため、担当者は稟議のストーリーを作りやすく審査部に説明もしやすくなります。
結果として、融資のスピードも精度も格段に上がります。
ここで意識したいのは、「雑談も立派な情報共有」だということ。
商談のように構えず、事業の変化や最近の顧客動向、現場の悩みなどを自然に話すことで、銀行担当者は「この社長の考え方がよくわかる」「誠実に経営している」と感じ取ります。
この“安心感”こそが、いざ融資審査を通すときに大きく作用するのです。
また、担当者は一人で複数の企業を担当しており、定期的に会って話をしてくれる社長のことは自然と記憶に残ります。
つまり、あなたが“顔の見える経営者”であるほど、
「次に融資を進める案件」として真っ先に思い出してもらえる確率が高くなるのです。
もう一つ大切なのは、「担当者にとって話しやすい社長」になること。
横柄な態度や威圧的な言葉は禁物です。
どれだけ業績が良くても、担当者が心理的に距離を感じれば、結果として支援の優先順位は下がります。
もし「担当者とどうしても合わない」と感じるなら、他の銀行にもパイプを持つことを検討して構いません。
銀行取引は“相性”も重要です。
担当者の異動や交代もあるため、複数の金融機関と適度な関係を築いておくことが、
長期的な資金調達の安定につながります。
融資は「人が人を動かす」世界です。
信頼関係が築けている会社ほど、いざという時に「助けたい」と思ってもらえます。
銀行担当者を“味方にする努力”こそ、資金繰りを安定させる最大の経営戦略なのです。

人間関係が融資を左右する――円満な関係を築くコツ
銀行融資は、最終的には「会社と銀行」という組織同士の取引ですが、
その前段階では必ず「人と人」との関係で進みます。
だからこそ、担当者との円満な関係を築けるかどうかが、融資の結果を左右するといっても過言ではありません。
実際、同じ業績・同じ規模の会社でも、担当者との関係性によって融資がスムーズに進む会社と、何度相談しても進まない会社があります。
この差は「決算書」ではなく、「担当者の心理」にあるのです。
銀行担当者も一人の人間。
感情があり、信頼できる相手を応援したくなるのは当然のことです。
たとえば、
・訪問時に笑顔で迎えてくれる
・約束を守る
・報告・連絡・相談を怠らない
こうした“当たり前のこと”を積み重ねている社長は、それだけで信頼されます。
逆に、約束を破る、感情的になる、他行との比較を持ち出してプレッシャーをかける――
そんな態度を取る経営者は、無意識のうちに担当者の心を遠ざけてしまいます。
「この社長を助けたい」と思われるか、「ちょっと距離を置きたい」と思われるか。
その差は、日々の小さなやり取りの中で決まっていくのです。
また、“正直に話すこと”も重要です。
資金繰りが厳しいときこそ、取り繕わずに現状を共有する。
「今はこういう状況ですが、こうやって改善していきます」と伝えられる社長ほど、銀行は本気で支援しようと動きます。
反対に、都合の悪いことを隠したり、質問に曖昧な回答をしたりすると、「この会社は信用できない」と判断されてしまいます。
もし、どうしても担当者と相性が合わない場合は、無理をせずに別の金融機関や担当者を変えてもらうなども一つの手です。
複数の銀行とバランスよく関係を築いておくことで、リスクを分散し、より安定した資金調達が可能になります。
円満な関係づくりとは、「媚びること」ではなく「信頼されること」。
そのために必要なのは、誠実な姿勢と、日々の丁寧なコミュニケーションです。
銀行担当者にとって、「この会社なら安心だ」と思われる存在になることが、
結果的に“融資が通りやすい会社”をつくる最善の方法なのです。

【まとめ】銀行と上手に付き合うための実務サポート
ここまで見てきたように、銀行融資は「数字」だけで決まるものではありません。
融資の成否を分けるのは、担当者との関係性、情報提供の速さ、そして誠実な姿勢。
つまり、“人間関係と準備力”が最大の武器なのです。
多くの経営者が誤解しているのは、「決算書さえ出せば銀行は判断してくれる」という考え方です。
しかし実際には、銀行内部では担当者→上席→審査部→本部といった複雑なルートを経て審査が進みます。
その中で、最初に動く“担当者”が「進めたい」と思える案件でなければ、
そもそも審査のテーブルにすら乗らないこともあるのです。
だからこそ、
融資を成功させるためには次の3つのポイント
1.情報提供をスピーディーに。
銀行が求める資料(試算表・資金繰り表・借入一覧・事業計画)は、求められる前に出すのが理想です。
「この会社は整理ができている」「数字の説明がわかりやすい」と思われることで信頼が高まります。
2.日常的な接点をつくる。
融資相談のときだけ銀行に顔を出すのではなく、定期的に業績報告や近況を共有しましょう。
「この会社は誠実に経営している」と感じてもらえることが、融資判断のプラス材料になります。
3.誠実で正直な対応を心がける。
都合の悪いことほど、早めに相談を。
資金繰りの悪化や赤字見込みなどを隠さず共有することで、銀行も「一緒に考えよう」と姿勢を変えます。

そして、もし「どう伝えればいいか」「どんな資料を出せばいいか」分からない場合には、
私たちのような外部CFO(財務パートナー)を頼ってください。
当社では、銀行との打ち合わせに同席し、決算書や試算表の“見せ方”を整えることで、融資を通りやすくするサポートを行っています。
また、資金繰りの改善・事業計画書の策定・リスケ交渉など、財務全般の戦略設計をワンストップで支援しています。
銀行に「この会社なら安心して貸せる」と思ってもらうために、日々の経営と数字の“伝え方”を磨くことが、最も現実的で効果的な融資戦略です。
融資や銀行対応に不安がある方へ
「融資を通したいが、どう伝えたらいいかわからない」
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