「今、借りるべき?」と悩む社長が増えている理由
「今、借りておくべきでしょうか?」「銀行から借りてくださいと言われました」
この質問をいただく機会が、ここ1〜2年で確実に増えています。
また、SNSなどでは借りられるときに借りておけ!という表現もよく見ます。
これは半分正解で半分不正解。
背景には、金利上昇や景気の先行き不透明感、そして銀行の融資姿勢の変化があります。これまで“借りやすかった時代”から、“審査が厳しくなる時代”に入った今、経営者の多くが「今のうちに動くべきか、それとも様子を見るべきか」と判断に迷っているのです。
資金調達のタイミングは、経営判断の中でも特に難しいテーマの一つです。
借入は、単にお金を得る行為ではなく、「会社の未来をどう描くか」に直結します。必要なときに借りられなければ経営が止まり、逆に不要なときに借りてしまえば返済が重荷となり、資金繰りの自由度を奪います。
たとえば、銀行から「今がチャンスですよ」と融資を提案されたとき。
一見、好条件に見える話でも、会社のキャッシュフローや今後の投資計画を踏まえていない場合、「なぜ今、借りるのか」という根拠が曖昧になりがちです。結果として、数ヶ月後に本当に必要な場面が来たときに、すでに借入枠を使い切っていた――そんなケースも珍しくありません。
経営の現場では、「借りる・借りない」の判断を“勘”や“感覚”で行ってしまうことがよくあります。
しかし、資金繰りや銀行融資の仕組みを正しく理解していないと、短期的な判断が長期的な経営リスクを生むことになります。
一方で、借入は「悪」ではありません。
むしろ、成長局面や新しい投資のために戦略的に使うのであれば、極めて有効な経営手段です。重要なのは、“今、本当に借りるべきか”を冷静に見極めるための視点を持つこと。
資金調達は、会社のステージや業種、そして経営者の考え方によって最適解が異なります。
だからこそ、「他社が借りているから」「銀行に勧められたから」という理由ではなく、自社の資金循環を踏まえて判断することが欠かせません。

借入をすべき“前向きなタイミング”とは?
借入というと、「苦しいときに頼るもの」というイメージを持つ方がまだ多いかもしれません。
しかし、実際の現場で健全な財務運営をしている企業ほど、“調子のいいときにこそ借りる”傾向があります。
なぜなら、業績が安定している時期は、銀行からの信用評価が高く、融資条件(期間・金利・担保条件など)も有利に進められるからです。つまり、資金が必要になってから慌てて動くより、「余裕のあるうちに先手を打つ」方が、結果的にリスクを抑えられるのです。
たとえば、以下のような場面では、前向きな借入が有効です。
- 創業・立ち上げ期
売上が立つまでの時間を見越して、設備資金+運転資金を確保しておくことが重要です。元金返済の据置期間を活用することで、創業初期のキャッシュフローを守ることができます。 - 売上が伸びている局面
売上の拡大に合わせて、仕入や人件費が先行して増加します。資金繰りが苦しくなる前に、運転資金を確保しておくのが理想です。銀行も「伸びている会社」には積極的に支援するため、最も借りやすいタイミングです。 - 大口受注・新規プロジェクトの受注時
材料費や納期までの人件費など、受注から入金までの間に資金が必要になります。事前に融資を組み、運転資金を確保しておけば、資金ショートを防げます。 - 設備投資・店舗展開などの拡大局面
事業を広げるための設備や店舗への投資は、長期返済の借入が前提です。ここで無理に自己資金を使い切ると、運転資金に余裕がなくなります。投資資金と運転資金は、必ず切り分けて考えることが大切です。 - 慢性的に資金需要が発生する業種
建設業や製造業・介護福祉業など、仕入先への支払いが早く、入金が遅い業種では、月商の2〜3か月分の資金を常に確保しておきたいところ。これは“赤字の補填”ではなく、構造的に必要な資金。安定運営のための借入は、むしろ健全な判断です。
これらに共通するのは、「借入=経営戦略の一部」として位置づけている点です。
借りること自体を目的にするのではなく、「未来の成長を支えるために、どのタイミングでどう使うか」を設計できている企業が、結果的に財務の安定感を保っています。

借りるべきで“ない”状況と、銀行に振り回されない判断軸
「銀行から提案されたから」「今なら通りやすいと言われたから」——そんな理由で借入を決めてしまう経営者は少なくありません。
しかし、これは資金調達における典型的な落とし穴のひとつです。
銀行には、月末や年度末などに「融資実績を積み上げたい」という事情があります。
もちろん、銀行の提案がすべて悪いわけではありません。むしろ良い条件を出してくれることもあります。
ただし問題は、「それが本当にあなたの会社にとって“必要なタイミング”なのか」を誰も代わりに判断してくれない、という点です。
とりあえず借りておこう。
この発想で調達した資金は、往々にして“使い道のないお金”になります。
しかも、使わないまま返済が始まるとキャッシュフローを圧迫し、「本当に必要なときに融資枠が残っていない」という最悪の結果を招きかねません。
もう一つ注意したいのは、保証協会付き融資の扱い方です。
保証協会の制度には上限枠があり、一度利用すると一定期間は新たに保証が受けられないケースもあります。制度を理解せずに短期的な資金繰り目的で利用すると、将来の成長投資や借換えがしづらくなることもあるのです。
また、金利の低さだけで判断するのも危険です。
金利は「安いに越したことはない」と思われがちですが、低金利=条件が良いとは限りません。融資の柔軟性(追加借入のしやすさ、リスケ時の対応など)を総合的に見ておくことが、実務上はずっと重要です。
ここで持っておきたい考え方は、「銀行の都合ではなく、自社の資金循環の都合で借入を決める」という視点です。
銀行はあくまで“パートナー”であり、経営判断を委ねる相手ではありません。
「今の資金繰りをどう安定させたいのか」「半年後にどんな投資を予定しているのか」こうした自社の中期的な見通しを前提に、借入を位置づけることが大切です。
実際、私がサポートしてきた中でも、銀行の提案をすべて受け入れた結果、数年後に資金繰りが硬直化してしまった企業が少なくありません。
反対に、「今は借りない」と明確に判断し、次に借りるタイミングやその理由を説明できた経営者は、銀行からの信頼をむしろ高めますし、借りてもらうために有益な情報を提供してくれるかも知れません。 つまり、“断る力”も財務戦略の一部なのです。

借入判断に迷ったら、“財務の伴走者”に相談を
資金調達は、経営者にとって避けて通れないテーマです。
しかし、借入を「する・しない」の判断を一人で抱え込むと、どうしても視野が狭くなりがちです。
銀行の提案をどう受け止めるか、資金繰りにどんな影響が出るか、将来の投資計画と整合しているかこれらを冷静に整理するには、第三者の専門的な視点があると心強いかも知れません。

経営者の方々は日々、売上、社員、取引先といった多くの課題に向き合っています。
その中で、「資金のことだけをじっくり考える時間」を取るのは難しいものです。
だからこそ、借入の是非を判断するときこそ、財務の専門家に相談する価値があります。
私たちが現場で支援する際には、まず「なぜ今、資金が必要なのか」「何のための借入か」を経営者と一緒に整理します。
単なる数字合わせではなく、事業の方向性や将来のリスクも含めて“経営戦略としての借入”を設計するのです。
たとえば、
- 銀行との交渉をどの順序で進めるべきか
- どの制度融資を使えば次の展開がスムーズか
- 返済条件をどう設定すればキャッシュを守れるか
こうした点を、第三者としてフラットに助言します。
また、「今は借りない方がいい」という結論に至ることもあります。
それでも相談する意味は大きいのです。
なぜなら、“借りない理由”を自信を持って説明できるようになれば、銀行からの信頼度はむしろ高まるからです。経営者としての判断軸が明確であることは、財務体質そのものの強さにつながります。
資金調達は、“スピード”も大事ですが“方向性”も重要です。
焦って決めた借入は、後で経営の自由度を奪うリスクがあります。
一方で、しっかりとした準備と根拠のある資金戦略を立てれば、融資は企業の成長を後押しする強力な武器になります。
「今、借りるべきか?」と迷ったときこそ、立ち止まって考えるチャンスです。
銀行の都合ではなく、自社の未来を軸に判断するために。
財務の伴走者として、あなたの会社の最適な資金戦略を一緒に設計いたします。
まずはお気軽にご相談ください。
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