元請会社から受注する際のリスク管理

――「大きな仕事」こそ、冷静な経営判断が必要です――

中小企業にとって、大口の受注は大きなビジネスチャンスです。しかし、裏を返せば、その案件が「未入金」や「支払遅延」となるだけで、一気に経営が傾くリスクもあります。最近、実際に「受注はしたけど入金が遅れ、支払いができない」というご相談を立て続けにいただいています。

こうした事態を防ぐために、どのような視点で「元請けからの受注リスク」を管理すべきか。本稿ではそのポイントを実務ベースで解説します。


資金繰りの命綱は「入金タイミングの確実性」

案件の規模が大きくなるほど、着手前に「仕入れ」「人件費」「外注費」などの先行投資が必要になります。そのため、元請けからの入金が予定より遅れると、下請けや仕入先への支払いが滞り、信用不安が発生するリスクが高まります。

こうした資金ギャップに対応するため、調達手段の選択肢としては主に以下の2つがあります

  • 銀行からの短期資金調達
     手形貸付や
    ABL(売掛金担保融資などで、発注書や契約書を元に融資を受ける。ただし、審査に数週間かかる場合もあり、スピード対応には不向き。
  • ファクタリングの活用
     売掛債権を早期現金化するサービス。手数料(3~1
    0%程度)は割高だが、1週間以内で資金化できるため、短期的な資金繰り対策として有効。

資金繰りの詰まりが信用不安を生み、次の受注に影響を及ぼすこともあります。数%の手数料を“高い”と感じる前に、事業継続のリスクと天秤にかけて判断することが重要です。


よくある「契約書なし」のリスク

とくに建設・設備・製造業では、慣習的に「口頭受注」や「発注書ベース」の取引が多く見られますが、これは金融機関からすると「不透明」と判断されます。

契約書を取り交わしておけば:

  • 銀行融資時のエビデンスになる
  • 契約不履行時の交渉材料になる
  • 社内での意思決定の裏付けとなる

という複数のメリットがあります。


相手先の信用調査は怠らない

新規の元請先や初めての大口取引の際には、必ず相手先の信用調査を行いましょう。

  • 東京商工リサーチや帝国データバンクのスポット調査
  • 過去に取引した同業者からの評判収集
  • 代表者やグループの背景調査

こうした調査に1万円~2万円のコストがかかっても、100万円単位の貸し倒れや未入金を防げると思えば“必要経費”です。


「売上至上主義」の落とし穴

売上が伸びる=利益になる、というのは誤解です。現実には:

  • 掛取引で入金が遅れる
  • 材料高騰で利益が削られる
  • 人手不足で追加コストが発生する

など、様々な“ズレ”が発生します。だからこそ、「目の前の数字」ではなく、「入金・支払い・利益」の全体像を踏まえて判断することが求められます。


まとめ:チャンスとリスクは表裏一体。経営者の判断が会社を守る

「儲かりそうだから…」という一時の感情で動くのではなく、「本当にその受注は会社を前進させるのか?」という視点で冷静に判断する力が、経営者には必要です。

当社では、資金繰り支援や取引先のリスク管理アドバイス、契約時の融資戦略まで、一貫してサポートしています。経営の右腕が必要な時は、ぜひご相談ください。あなたのビジネスに合った“守りの戦略”をご提案します。

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