~あなたの会社に合った借入の“カタチ”とは~
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はじめに:融資は「借りられれば何でもいい」わけじゃない
経営者の中には「とにかく借りられればOK」と思っている人も少なくありません。気持ちはわかります。資金が足りない、すぐに運転資金が必要、チャンスを逃したくない…。でも、ちょっと待ってください。
借入には種類があります。しかもその選び方ひとつで、後々の資金繰りや経営判断に大きな差が出てきます。
今回は、経営初心者でもわかるように、「融資の種類」と「使いどころ」、そして「銀行が何を見ているのか」まで、ざっくりわかりやすく整理してみました。

証書貸付金:最も一般的でベーシックな借入
まずは、銀行融資の基本形ともいえる「証書貸付金」。これは、契約書(借用証書)を交わして借りるシンプルな形式の融資です。
特徴:
• 返済期間や利率、返済方法が最初に決まる
• 通常は「設備資金」や「運転資金」として使われる
• 担保や保証が付くことが多い(信用保証協会付きなど)
創業時や初めての融資では、たいていこの証書貸付が使われます。「スタンダードな借入」と覚えておけばOK。
向いている企業:
• 初めて融資を受ける中小企業
• 計画的に返済できる体制がある会社
• 明確な資金使途があるケース
手形貸付:まとまった金額が必要な業種に多い(+根保証枠の活用)
建設業や不動産業など、一件ごとの金額が大きく、仕入や外注費が先行する業種で使われるのが「手形貸付」。この形式は、支払いサイトが長くなりがちな業態に向いています。
さらに、この手形貸付とセットで検討されるのが「信用保証協会の根保証枠付き融資」です。
手形貸付の特徴:
• 売掛金や在庫などを根拠に借入額を設定
• 利息と元金を期日一括で返済する形式が多い
• 決算書に「ある程度の資産ボリューム」がある会社に向いている
そして、ここで出てくるのが“根保証枠”という考え方。
これは、信用保証協会が「上限〇〇万円まで」保証しますよという事前設定型の枠で、必要なときにその範囲内で借入ができるという仕組みです。いわば、「融資の非常口」的存在。
根保証枠のメリット:
• 必要な時にすぐ借りられる(スピード感がある)
• 取引の都度、保証協会審査を通さなくていい(初回だけ)
• 一時的な資金繰り悪化時に安心材料になる
ただし、注意点も。
この根保証枠は、「枠全体に対して信用保証料が一括でかかる」という点に要注意。
たとえば、1,000万円の枠を作っても、実際に使うのが200万円だったら、残り800万円分の保証料は「無駄に支払ってる」ことになる。つまり、計画性がないと“保険料高すぎ問題”になるわけです。
向いている企業:
• 資金需要が季節や受注に応じて変動する建設業・製造業など
• 利用頻度が高く、上限枠を使い切る見込みがある企業
• 突発的なキャッシュ不足リスクに備えたい中小企業
このように、借入の「種類」と「付き合い方」には、それぞれに事情とクセがある。
無難にやるも良し、戦略的に使い倒すも良し。
ただし“知ってて選んだ”と“知らずに飲まされた”では、同じ借入でも全然違います。
当座貸越(とうざかしこし):使えるけど、ハードル高め
当座貸越は「限度額の中で、必要な分だけいつでも借りられる」便利な融資枠。いわば、企業版クレジットカードのようなイメージです。
特徴:
• 日々の資金繰りの中で、必要な時に使える
• 使った分だけ利息が発生
• 使途が曖昧になりがち=審査が厳しい
• 基本的に担保や長い付き合いが必要
金融機関からすると、何に使うかわからない=返済リスクが見えにくい、となり、慎重になりがち。
向いている企業:
• 日銭商売(飲食・小売)などで日々の流動性が必要
• 在庫が命の業種
• 銀行との信頼関係ができている企業
資本性ローン:ちょっと大人な資金調達
名前からして堅そうな「資本性ローン」。実はこれ、借金なのに資本(=自己資本)とみなしてくれる特殊な融資です。これにより、自己資本比率が改善され、他の融資も受けやすくなる効果があります。
特徴:
• 原則返済猶予期間あり(利息のみ支払い)
• 財務的には「資本」と見なされる
• 財務改善に有効
• 公庫や一部銀行が取扱い
ただし、ある程度の規模が求められ、提出書類も多く、経営の見通しも必要になるため、手軽に使えるわけではありません。
向いている企業:
• 成長フェーズで投資したい企業
• 財務体質を改善したい中堅企業
• 公的支援制度を活用したい場合
私募債:信用がモノを言う調達方法
私募債とは、「企業が特定の投資家(主に銀行)に向けて発行する社債」です。つまり「借金を証券化する」方法。これも融資の一形態として使われます。
特徴:
• 定期的な償還が必要(資金繰りに注意)
• 銀行からの「信用」やある程度の規模感が前提
• 財務やガバナンスがしっかりしている必要あり
資金繰り管理が甘いと、満期を迎えた時に返済できず、信用を失うリスクも。あくまで「使いどころを見極めた上級者向け」。
向いている企業:
• 成熟フェーズで投資戦略を取る企業
• 償還管理をしっかりできる会社
• 財務ガバナンスが整っている法人
借入は「戦略」である
大事なのは、「どれがいいか」ではなく「自社に合っているかどうか」です。借りられるから借りる、ではなく、目的と返済可能性、そして経営フェーズに応じて最適な手段を選ぶ必要があります。
融資を選ぶための3つの視点:
1. 資金使途は明確か?(設備投資/運転資金/つなぎ資金など)
2. 返済原資の見込みはあるか?(粗利、CF)
3. 財務状況に合った選択か?(借りすぎてないか?)
まとめ:あなたに合った借入の形、ちゃんと選べてますか?
資金調達は、経営判断の中でも特に戦略的な分野。借り方ひとつで、資金繰りのストレスも、銀行との関係も、会社の未来も大きく変わります。
「どの借入が自分の会社にとってベストなのか」
「銀行とどんな関係を築くべきか」
そんな悩みや迷いを持っているなら、うちのような“外部CFO”を活用するという選択肢もあります。
金融機関との交渉、融資戦略の設計、財務の見える化まで、経営に必要な「数字の筋肉」を一緒に鍛えていきましょう。
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