~経営者の直感を「数字」で裏付けるということ~
「売上は悪くない。でも、なんとなく会社がうまく回ってない気がする」
「人は増えてるのに、忙しさが減らない。利益もあんまり…」
「資金繰りが苦しいのは分かってる。でも、何から手をつければいいのか…」
こうした“もやもや”を抱えながら経営している方は、意外と少なくありません。
そして多くのケースで、そのもやもやの正体は「数字」に隠れています。
数字は感情を持ちません。だからこそ、経営者の直感を裏付けたり、逆に覆したりするリアルな証拠として機能します。
今回は、決算書や月次試算表から「組織の状態」や「経営のクセ」がどう見えてくるのか、事例を交えながらお話しします。

1. 月次試算表の“遅れ”が教えてくれるもの
「月次試算表が毎月きちんと出てこない」
──これ、単なる会計の問題に見えるかもしれませんが、実は組織の状態を表す“サイン”です。
● 人材不足で事務処理が追いつかない
● 現場に負担が集中していて、経理への情報連携が遅い
● 税理士との関係性が薄く、資料整理に時間がかかっている
月次の数字が後手になるということは、「問題の発見が遅れる」こととイコールです。
これは、言い換えれば「意思決定のスピードが遅くなる」ということ。
数字の遅れは、会社のPDCAの遅れです。
2. 売上総利益率(粗利率)から見えること
「売上は上がってるのに、利益が出ないんだよね…」
そういうときは、まず粗利率(売上総利益率)を見ます。
ここからは例えば、こんなことが見えてきます:
• 主力商品は売れてるけど、原価率が高すぎて利益が出ない
• 値引きやキャンペーンが増えすぎて、粗利が削られている
• 外注費や人件費がじわじわ膨らんでいる
数字を分解していくことで、「どこでお金が漏れているのか」が見えてきます。
ここに踏み込めないと、「売上を伸ばしても手元にお金が残らない」状態が続いてしまいます。
3. 人件費率から見えてくる“構造”の問題
「うちは人件費が高くて…」という声も多く聞きます。
ただし、問題は単なる“額”の大きさではなく、“構造”の歪みです。
たとえば:
• 正社員比率が高すぎて、稼働の波に対応できていない
• 一人あたりの売上(労働生産性)が極端に低い
• 業務内容に対して給与の設計がアンバランス
この状態を続けると、固定費が膨らみすぎて組織の柔軟性がなくなります。
「人件費率が高い」という数字は、単なる経費の話ではなく、組織設計や人事制度の問題を浮き彫りにしているのです。
4. 売掛金・棚卸資産・借入金の”クセ”
貸借対照表(BS)の中身にもヒントは山ほどあります。
• 売掛金が膨らんでいる → 回収サイトが長い or 放置されている
• 在庫が増えている → 回転が遅い or 過剰仕入れ or 棚卸不備
• 借入金の本数が多い → 資金繰りが都度都度で、戦略的でない
特に「借入金の本数が多い」というのは、資金繰りに追われている状態の象徴です。
都度都度で調達しているうちに、返済が重なり、キャッシュが圧迫されていく…。
これは「経営判断が場当たり的になっている」ことを示す指標でもあります。
5. “数字で壁打ち”する意味
「売上と利益だけ見てても、経営判断は難しい」
これは、現場に立っている社長ほど実感していることだと思います。
だからこそ、“数字で壁打ち”できる相手の存在が大切です。
私たちのような外部CFOの役割は、単に数字を整理することではありません。
数字の“変化”を読み取って、どこに問題があるのか、どう改善するかを一緒に考えます。
• 数字から課題を発見し
• タスクを言語化し
• 優先順位を決めて
• 改善を定着させていく
数字は嘘をつきません。でも、その読み解き方次第で、会社の未来は大きく変わります。
まとめ|数字が語るのは“経営のクセ”と“組織のリアル”
数字は、経営者の「感覚」や「直感」を補い、裏付ける武器です。
そしてそこからは、組織の仕組み、人材の運用、資金の使い方、戦略のズレといったリアルが立ち上がってきます。
• 月次試算表が遅い=業務と連携に問題がある
• 粗利率が低い=商品の見直し or 外注バランスに問題がある
• 人件費が重い=構造が硬直化している
• 借入金の構成=経営判断のパターンを映す鏡
数字を見るのは“経理の仕事”じゃありません。
経営者の仕事です。
でも、経営者が一人で見るには多すぎるし、重すぎる。
だからこそ、信頼できる外部のパートナーと一緒に数字を読み、会社の健康状態を点検し、未来の地図を描くことが求められる時代です。
あなたの“もやもや”も、数字がきっと教えてくれます。
その読み方、整え方、活かし方──私たちにお任せください。
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