銀行が語らないアパート融資の現実と対策
かつては「低金利・フルローン」が当たり前だった不動産投資の世界。しかし今、市場環境は劇的に変化しています。物件価格の高止まりに加え、金利上昇による返済負担の増大が、大家さんの収益を直撃しています。
本コラムでは、銀行が教えてくれない融資の裏側と、この苦境を乗り越えるための具体的な戦略を解説します。
1 .「低金利・フルローン」の幻想がもたらす現代の危機
かつて不動産投資市場には、「サラリーマン大家」という言葉が溢れ、本業の収入があれば誰でも簡単にアパート経営が始められる時代がありました。銀行は競うように融資を出し、自己資金ゼロのフルローン、さらには諸経費まで含めたオーバーローンすら珍しくありませんでした。しかし、その輝かしい時代はすでに過去のものです。
現在、投資家を取り巻く環境は劇的に変化しています。その最大の要因は、世界的なインフレと連動した国内の「金利上昇」です。
わずか0.5%の金利上昇であっても、数億円規模の借入があるアパート経営においては、年間で数十万円、数百万円単位のキャッシュフローを奪い去ります。かつて「表面利回りの良さ」だけで購入した物件は、今や返済後の手残りがほとんど残らず、わずかな空室や修繕が発生しただけで赤字に転落する「時限爆弾」と化しているケースも少なくありません。
さらに追い打ちをかけるのが、銀行側の強気な姿勢です。銀行もまた、自社の収益確保に必死です。これまでのように「金利を下げてほしい」と交渉しても、「今の市場環境では不可能です」「嫌なら他へ借り換えてください」と突き放されるケースが急増しています。銀行が語らない残酷な現実は、もはや「貸してあげる側」が圧倒的に優位な立場にあるということです。

2. なぜ「アパートローン」はここまで厳しくなったのか
現在の融資難には、明確なターニングポイントがあります。それが2018年に発覚した「スルガ銀行の不正融資問題」です。これを機に金融庁の監督の目は極めて厳しくなり、それまで「個人の年収(属性)」だけで貸していた銀行は、一斉に「事業性(物件の収益力)」を重視する審査へと舵を切りました。
この変化により、多くの投資家が以下の3つの壁に直面しています。
① 担保評価の「逆転現象」 収益還元法による評価が厳格化され、市場の販売価格が銀行の評価額を大きく上回る事態が続いています。「担保評価 < 購入価格」となれば、その差額は自己資金で埋めるしかありません。
② 属性評価から経営力評価へ 「大企業に勤めているから安心」という理屈は、もはや通用しません。「空室が出た際にどう埋めるのか」「長期的な修繕費をどう積み立てているのか」といった、事業者としての運営能力が厳しく問われるようになっています。
③ 地方銀行・信用金庫の貸出余力の変化 金利上昇に伴い、銀行自身も調達コストが上がっています。そのため、リスクの高い「アパートローン」への枠を絞り、より優良な貸出先に選別する動きが加速しています。「不労所得」ではなく、「経営者視点が必須の事業」へと完全に移行したのです。

3. 表に出ない最大の罠:法定耐用年数と「返済期間」の関係
不動産投資で失敗する最大の原因は、実は金利そのものよりも、銀行が設定する「返済期間」にあります。そしてその期間を決定づけるのが、建物の「法定耐用年数」です。
- 木造:22年
- 軽量鉄骨造(S造):34年
- 鉄筋コンクリート造(RC造):47年
銀行は原則として、この法定耐用年数から築年数を引いた「残存耐用年数」を融資期間のベースにします。例えば、築25年の木造アパートを購入しようとした場合、法定耐用年数をすでに超えているため、銀行の定型回答は「融資不可」か、あるいは「最長10年程度」といった非常に短い期間になります。
ここで計算していただきたいのが、キャッシュフローの変化です。 30年ローンであれば手残りが月20万円出る物件でも、期間が10年に短縮されれば元本返済額が跳ね上がり、キャッシュフローは毎月10万円の「持ち出し(赤字)」になる可能性があります。
仲介業者の広告には「利回り12%!満室想定家賃〇〇万円!」と景気の良い数字が並びますが、その裏にある「融資がついたとしても、経営が成立しない」という落とし穴について、銀行も業者も親切に教えてはくれません。

4. 突破口となる高度な融資戦術:分割借入とテールヘビー
厳しい現状を打破し、キャッシュフローを死守するためには、銀行から提示される「定型プラン」を鵜呑みにせず、投資家側からテクニカルな融資設計を提案する必要があります。
① 「分割借入」という裏技
通常、ローンは物件(土地+建物)に対して1本で組みますが、これを**「土地部分」と「建物部分」に分けて契約する**のが分割借入です。 建物は法定耐用年数に縛られますが、土地には寿命がありません。そのため、建物部分は15年、土地部分は30年といった形で融資期間を設計することで、全体の平均返済額を抑え、キャッシュフローを劇的に改善させることが可能です。
② 「テールヘビー型」ローンの戦略的活用
「今は手元に現金を残したい」という場合に有効なのが、返済期間の後半に元本の返済を集中させるテールヘビー型です。 例えば、当初の10年間は元本の返済を抑え(据置に近い形)、最終回にまとまった金額を一括返済する、あるいはその時点で再融資や売却を行うという設計です。これにより、金利上昇局面でも当面の運営資金を厚く確保し、次の投資への種銭を作ることができます。
ただし、これらの手法は銀行にとって「手間がかかる」「リスク評価が難しい」ため、経験の浅い担当者では理解すらできないことが多々あります。だからこそ、「なぜこのスキームなら安全に返済できるのか」をロジカルに説明する事業計画書が武器になるのです。

5. 「投資家」を卒業し、「経営者」として銀行と対峙せよ
これからの時代、不動産投資で生き残るためのキーワードは「脱・不労所得」です。不動産投資は、アパート経営という立派な「事業」です。
銀行の審査担当者がチェックしているのは、もはやあなたの年収だけではありません。
- 返済原資の多角化: 万が一の空室時でも、他の事業所得や給与でカバーできるか。
- PM(プロパティマネジメント)への理解: どの管理会社と組み、どう入居率を維持するのか。
- 出口戦略の具体性: 10年後、20年後にいくらで売却し、残債をどう処理するのか。
銀行が「金利交渉には応じない」と強気に出るのは、あなたが「代わりの効く客」だと思われているからです。しかし、緻密な事業計画を持ち、数字で銀行を納得させられる「事業者」になれば、銀行にとってあなたは「守るべき優良な取引先」へと変わります。

6. まとめ:不動産経営の未来を左右する“融資の設計図”
アパートローンは、単にお金を借りる手段ではありません。それは経営における「レバレッジの最適化」であり、戦略そのものです。
現在の金利上昇局面において、かつての成功体験は通用しません。 「銀行がこう言っているから仕方ない」「業者が大丈夫と言っているから信じる」という受動的な姿勢は、そのまま経営破綻のリスクに直結します。
今、あなたに求められているのは、以下の3点です。
- 現状の収支を「金利上昇」と「空室」のストレスをかけて再シミュレーションすること。
- 耐用年数や担保評価の壁を越える、テクニカルな融資手法を知ること。
- 銀行と対等に渡り合える、ロジカルな事業計画を構築すること。
不動産経営を「ギャンブル」にするか「盤石な事業」にするか。その分水嶺は、あなたがどれだけ“融資の真実”に向き合い、戦略的に動けるかにかかっています。
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