資本性ローンってなに?
「借金なのに資本扱い?」ちょっと不思議なお金の仕組み
「資本性ローン」という言葉、聞いたことはありますか?
これは一言でいうと、借入なのに銀行からは“自己資本”とみなしてもらえる特別な融資のことです。
普通の借金とちょっと違う仕組みを持っているため、銀行の信用格付(会社の信用力を点数化するようなもの)のときに有利に働きます。
普通の借入とどこが違うの?
- 返済は最後にまとめて
通常の借入は毎月コツコツ返済するのが一般的。
資本性ローンは原則として満期になったときに一括で返済する形です。だから毎月の資金繰りを圧迫しにくく、当面は返済を気にせずに事業に投資できます。 - 返済の順番が後回し
もし万が一会社が厳しくなったとき、他の借金よりも返済の優先順位が低く設定されています。銀行から見れば「このお金は返ってこないかもしれない分、資本に近い」と判断されるわけです。 - 金利が業績に連動する
黒字なら少し高め、赤字なら低めに設定されるなど、利益に合わせて利息が変動する場合もあるんです。赤字のときに利払い負担が減るのは助かりますよね。
どんなときに役立つの?
- 経常的に大きな運転資金が必要なとき
- 大きな設備投資をするとき
- 売上を伸ばすための先行投資が必要なとき
- 再建や事業の立て直しを図るとき
こうした局面で、資本性ローンを使うと「自己資本が厚い会社」に見せられるので、他の銀行からも追加の融資を受けやすくなるんです。
ただし、「返さなくていい借金」ではありません。あくまで最後には返す必要がある資金ですし、使える会社の条件や審査のハードルもあります。
けれど、うまく使えば会社の信用力を底上げしてくれる強力な一手になるのは間違いありません。

資本性ローンを使うとどうなる?
「お金が借りやすくなる」以外にもたくさんのメリット
資本性ローンの一番の効果は、なんといっても会社の信用力が上がることです。
銀行は決算書を見るときに「自己資本比率」という数字を重視します。これは会社の体力を表すような指標で、比率が高いほど「健全な経営をしている」と評価されやすいんです。
資本性ローンは銀行での信用格付けにおいて、借入だけど自己資本に組み入れて良いというルールがあります。この比率がグッと改善されます。その結果、他の銀行から見ても「この会社なら追加でお金を貸しても大丈夫だ」と思ってもらいやすくなるわけです。
但し、銀行担当者や顧問税理士もそれを知らなかったり、気づかない場合もありますので、決算の際にBSに表示するとか勘定科目明細に表記して説明するなどの工夫をしておくことが望ましい。
具体的にこんなメリットが!
- 追加融資が受けやすくなる
自己資本が厚く見えることで、他の銀行も安心しやすくなります。「あの銀行も支援しているなら」と後に続く形で、資金調達の道が広がることもあります。 - 資金繰りに余裕ができる
毎月の返済がなく、満期にまとめて返す仕組みなので、手元のキャッシュを守りやすくなります。その分を仕入れや人件費、広告費などに回せるのは大きなメリットです。 - 成長の先行投資がしやすい
新規事業や出店は、最初にお金がかかるのに売上が立つのは後から。資本性ローンなら「売上が立つ前の不安定な時期」にも会社を支える資金として役立ちます。 - 再建局面での安心材料になる
経営が厳しい時期に「資本性ローンで支えられている」という事実があるだけで、他の銀行や取引先の安心感が高まり、再建への協力を得やすくなることもあります。
資本性ローンは、単に「お金を借りられる」というメリットと、会社の見え方を改善してくれるというメリットがあります。決算書上の数字が良くなることで、外部からの評価が変わり、そこから次の展開に繋がっていきます。

誰でも使える?資本性ローンの“向き・不向き”
便利だけど万能ではない。条件と気をつけたいポイント
ここまで良いところをお伝えしましたが、資本性ローンは「誰でも・いつでも」使える魔法のお金ではありません。
いくつか“向き・不向き”があります。ざっくり整理すると、次の通りです。
まず、利用しやすい会社とは?
- ある程度の規模感や計画性がある
「売上の土台がある」「これからの成長計画が言葉にできる」会社が対象になりやすいです。創業まもない完全ゼロベースより、伸ばしたい柱が見えている会社のほうが相性◎。 - 用途が“前向き”に説明できる
出店・設備更新・新サービス立ち上げなど、何に使い、どう回収するかが話せること。慢性的な赤字の穴埋めだけだと通りにくいです。 - 基本的な管理が整っている
月次の数字、在庫や売掛の管理、税・社保の状況などがきちんと説明できること。ここが曖昧だと難易度が上がります。
注意したいポイント
- 「返さなくていい」わけではない
月々の返済はないケースが多いですが、満期には元本を返します。将来の返済原資(利益・リファイナンス・売却益など)の見通しを、早めに描いておくことが大切。 - 金利はやや高め・業績連動も
一般の長期融資より金利が高めになりがち。さらに、黒字で上がる/赤字で下がるといった業績連動タイプもあります。総コストを見誤らないように。 - “お約束”を守る運用力が必要
定期的な報告、一定の財務ルール、他行とのバランスなど、コベナンツ(約束事)を守る前提です。ここを雑にすると、せっかくの信用加点が台なしに。 - 穴埋め資金の“常用”はNG
構造的な赤字の補填に使い続けると、出口が見えなくなる危険があります。あくまで「立ち上がるまでの土台づくり」「再建の背骨づくり」としての利用が基本。 - 取り扱い先は限られる
公的機関や一部の金融機関が中心。案件の選定も慎重なので、“出せる先”と“出せるタイミング”の見極めがカギです。 - 申し込み手続きが超めんどくさい
審査書類が通常の融資と違ってものすごく沢山あります。この資料作成で心が折れてしまうケースも。。。
やっとできたと思って提出しても、あれこれ指摘を受けて訂正が必要になったりするので、精神的なダメージが大きい。
まとめると、資本性ローンは「攻めの一歩を支える長距離バッテリー」。ただし、ハンドル操作(計画・管理)が甘いと、かえって重たく感じることもあります。

中小企業にとっての“資本性ローンの使いどころ”
成長と再建の分岐点でこそ力を発揮する資金
資本性ローンは、普通の融資と違って「自己資本扱いになる」という特別な強みがあります。だからこそ、使いどころを間違えなければとても心強い武器になります。
では、中小企業にとって現実的にどう活用すればいいのでしょうか。
1. 成長局面での先行投資に
新店舗オープンや新規事業の立ち上げなど、売上が立つまでに時間がかかる投資は、どうしても資金繰りに不安が残ります。
ここで資本性ローンを活用すると、「返済は最後にまとめて」という仕組みを活かし、立ち上げ期にキャッシュを守りながら事業を育てられます。
さらに、自己資本が厚く見えることで、追加の融資も受けやすくなるため、成長スピードを加速させたい会社には相性が良い資金です。
2. 再建・立て直しの“背骨”に
赤字や資金ショートを経験した会社にとって、再建の道は平坦ではありません。
資本性ローンを組み込むことで、決算書上の自己資本比率が改善し、銀行や取引先から「立て直しの意思がある」と見てもらいやすくなります。「再建フェーズの信用材料」として機能するのは大きなメリットです。
3. 通常の融資を引き出すための呼び水に
資本性ローンはそれ単体でも役立ちますが、実は“呼び水”としての効果も大きいです。ひとつの銀行が資本性ローンで支援すると、他の銀行も安心して追加融資に踏み切るケースがあります。資金調達全体の流れをつくる意味でも、有効なカードになります。
4. 専門家と一緒に計画を立てることがカギ
ただし、資本性ローンは「誰でも気軽に」使えるものではありません。一定の条件や審査があり、使い方を間違えると返済時に大きな負担になるリスクもあります。だからこそ、外部CFOや財務に詳しい専門家と一緒にシミュレーションし、出口戦略を描くことが欠かせません。

まとめ
資本性ローンは、「返さなくていい借金」ではなく、“未来のチャンスを広げるための特別な資金”です。
成長のときも、再建のときも、会社の未来をどう描くかによってその価値は変わります。
もし「自分の会社でも使えるのか?」と気になったら、お気軽にご相談ください。正しく理解し、戦略的に取り入れることで、あなたの会社の可能性を大きく広げる資金調達の選択肢になります。
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