「資金調達」と聞くと、銀行融資を真っ先に思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、実際の経営現場では、銀行融資だけに頼らず、複数の手法を上手く組み合わせることがキャッシュフロー改善の鍵となります。
資金繰りが逼迫しているとき、あるいは新たな投資を行いたいとき。そうした場面で「借入一択」ではなく、「他に選択肢はないか?」という視点を持つことで、財務的な柔軟性や経営の安定性が大きく変わってきます。
本コラムでは、銀行融資以外にも活用できるキャッシュ創出手段を7つに分類し、それぞれの特徴や注意点を実務視点で詳しく解説します。自社にとって最適な資金調達のヒントになれば幸いです。

【1. 資産の売却でキャッシュを確保】
資産の見直しは、最も即効性のあるキャッシュ創出手段の一つです。特に、眠っている資産を棚卸しすることで、手元資金を生み出す余地があるかもしれません。
■ 棚卸資産の処分
長期間売れ残っている商品や回転率の悪い在庫を早めに処分することで、キャッシュフローを改善できます。
- 長期在庫の特価販売
- 季節商品や型落ち品の処分セール 在庫が現金化されれば、資金繰りに直接的な効果をもたらします。ただし、値下げによる利益率の低下や、ブランド毀損リスクには注意が必要です。
■ 償却済み固定資産の売却
すでに減価償却が終了し、財務上はほとんど価値が残っていない機械設備や事務機器などを見直してみましょう。業務に支障が出ない範囲で、遊休資産を売却すればキャッシュが即時確保できます。
今はリユース市場も活発なので、こんなものが?と思うものでも意外と期待以上の現金化にできるかも知れません。
■ リースバックの活用
所有する不動産や大型機械などを売却し、そのまま賃貸契約を結んで使用し続ける「リースバック」という手法もあります。資産価値のある設備を現金化しながら、使用継続が可能になるため、特に中長期の資金調達策として注目されています。
【2. 取引条件の見直しで資金繰りを改善】
外部からお金を借りるのではなく、「日々の取引条件」を見直すことでもキャッシュフローは改善可能です。
■ 売掛金の早期回収
- 支払いサイト(回収期間)の短縮
- 早期入金割引制度の導入
- 定期請求ではなく、随時請求への切り替え こうした改善により、資金の回収が早まることで手元資金の厚みが増します。
■ 買掛金の支払い延長
- 仕入先との支払い条件を交渉し、支払いサイトを延ばす
- 月末締め翌月末払い → 翌々月末払いなど ただし、仕入先との信頼関係が損なわれないよう、丁寧な交渉が必要です。過度な引き延ばしは信用低下を招く可能性もあるため注意しましょう。
【3. クラウドファンディングの活用】
商品開発や新規プロジェクトの立ち上げ資金を「市場」から集める方法です。
- リターン型クラウドファンディング(商品提供型)
- 寄付型クラウドファンディング
- 投資型クラウドファンディング
クラウドファンディングの魅力は、資金調達と同時に「ファンづくり」や「PR効果」が期待できる点です。
ただし、プロジェクトの魅力を伝えるマーケティング力や、広報活動が成否を大きく左右します。また、返礼品の準備コストや発送対応も忘れずに計画しましょう。
【4. 補助金・助成金の獲得】
返済不要の資金調達手段として有効なのが、国や自治体から提供される補助金・助成金です。
代表的な制度:
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
補助金は事業拡大や設備投資に利用できる反面、
- 採択率の不確実性
- 複雑な書類作成・報告義務 などのハードルもあります。
そのため、申請には専門家の支援を受けるとスムーズです。
【5. 社債の発行による資金調達】
ある程度の信用力を持つ中小企業であれば、「私募債(社債)」の発行も選択肢になります。
- 銀行を通じた保証付き私募債
- 投資家向けの資金募集型社債
メリット:
- 株式のような所有権の希薄化がない
- 金利負担が融資よりも軽い場合もある
デメリット:
- 社債の償還義務がある
- 信用力や財務内容に応じた制限がある
一定の規模や財務基盤を持つ企業であれば、金融機関や証券会社と連携しながら活用できます。

【6. 経費削減の徹底】
「キャッシュを増やす」ためには、「支出を減らす」視点も重要です。
- 固定費の見直し(家賃、人件費、保険料)
- サブスクや重複契約の整理
- 税務上の損金活用
経費削減は即効性こそ弱いものの、持続的なキャッシュ創出につながります。見えにくい支出ほど定期的にチェックし、削減の余地を探りましょう。
【7. 資金調達の“組み合わせ”が未来を変える】
資金調達は、1つの手法に頼るよりも、複数の選択肢を組み合わせることで柔軟性が高まります。
たとえば:
- 在庫処分で得たキャッシュをクラファンの初期コストに充当
- 設備リースバックで得た資金で補助金の自己負担分を確保
- 売掛金の早期回収と社債発行を併用し、返済計画に余裕を持たせる
このように、自社の財務状況と事業計画をふまえた資金調達の「組み立て」が、経営の安定性と成長力を高めるポイントになります。

【まとめ|未来に向けたキャッシュ戦略を考えよう】
資金調達=融資、という固定観念を捨て、自社にとって最適な方法を選択・組み合わせていくことが、これからの経営には求められます。
単なる借入ではなく、「どの手法をどう活用すれば持続可能な資金繰りになるか?」という視点を持つことが、キャッシュフロー改善の第一歩です。
当社では、こうした資金調達のご相談はもちろん、資産の見直しや財務戦略の設計まで、トータルでサポートしています。お気軽にお問い合わせください。
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